研究課題/領域番号 |
23K14986
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
眞弓 あずさ 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10789887)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 急性骨髄性白血病 / FUS-ERG |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小児期発症の急性骨髄性白血病(AML)の中でもいまだ難治性である、FUS-ERG融合遺伝子陽性のAMLの白血病発症機序を解明し、新規治療法を開発する事である。 FUS-ERG融合遺伝子を有するAMLは、化学療法や造血幹細胞移植といった集学的治療にも関わらず、欧米で4年無病生存率が10%未満、本邦で3年無病生存率が27%と報告され、きわめて予後不良であり、革新的な治療法の確立が強く望まれる疾患である。本疾患の治療抵抗性にはFUS-ERG融合遺伝子の関与が大きいと推察されるが、これまでFUS-ERG融合蛋白の機能は十分に解析されておらず、FUS-ERG陽性AMLを発症するマウスモデルも存在しない。 レトロウイルス遺伝子伝達系を用いて、マウスのLineage-の造血幹細胞にFUS-ERG融合遺伝子を導入し、免疫不全マウスに移植する事で、FUS-ERG蛋白融合蛋白のAML発症にかかわる機序を解明し、FUS-ERG陽性白血病を発症するマウスモデルを作成する。マウスモデルが作成できた場合は、有効な治療薬の開発に必要なin vivoモデルの提供につながる事が期待される。 本研究では、①FUS-ERG融合蛋白のAML発症機序を明らかにし、②FUS-ERG陽性AMLを発症するマウスモデルの作成を試みる。手順の概略として、1) Fus-Erg融合蛋白を恒常的に発現する細胞株を作成する、2)Fus-Ergの不死化能付与の必須領域を明らかにする、3)Fus-Erg融合蛋白の引き起こす変化を網羅的に解析する、4)Fus-Erg融合遺伝子陽性AMLを発症するマウスモデルを作成する、5)樹立したマウスモデルを用いた新規治療法の探索、を計画している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、予後不良であるFUS-ERG陽性急性骨髄性白血病において、FUS-ERG融合蛋白のAML発症機序の一端を解明し、世界初となるFUS-ERG陽性AML発症マウスモデルの作成を目指して、研究を行っている。 これまで、Fus- ErgまたはFus-Erg R319L(ErgのEtsドメインのアミノ酸置換でDNA結合能を損なった変異体)を発現するマウス造血幹細胞(以下、mBM Fus-Erg、mBM R319L)を作成し、検討を行った。コロニー形成能アッセイでは、mBM Fus-Ergは自己複製能を獲得したが、mBM R319Lは自己複製能を持たず、EtsドメインのDNA結合能が自己複製能獲得に重要であると考えられた。また、mBM Fus-Ergでは、フローサイトメトリーでGr-1、Mac-1の発現が低下しており、細胞の分化障害が示唆された。さらに、全トランスクリプトーム解析、Gene Set Enrichment Analysisで、Fus-ErgがMYC過剰発現に関連する遺伝子群の発現に関わることが確認された。ただ、今回示したin vitroモデルはFUS-ERGによる白血病発症機序の解明の一助となるが、完全な白血病化には協調する遺伝子異常が必要な可能性があると考えており、更なる検討を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、FUS-ERG発現細胞株を免疫不全マウスへ移植し、FUS-ERG陽性AMLを発症するマウスモデルを作成する。また、樹立した細胞株の細胞死を誘導する低分子化合物をライブラリースクリーニングによって同定する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、FUS-ERG融合蛋白のAML発症機序を明らかにする目的でin vitroの研究を実施し、新たな知見が得られ、より高度な研究成果を得るために新たな知見の検討を進めている。次年度以降で、FUS-ERG陽性AMLを発症するマウスモデルの作成を試みる目的でin vivoの研究を実施する予定である。今年度のin vitroで使用しなかった研究費は、次年度以降のin vitroおよびin vivoの研究で使用したいと考えており、次年度へ繰り越す必要があり、申請する。
|