研究課題/領域番号 |
23K14997
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
西條 琢真 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, 研究員 (30836995)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 知的障害 / 神経発達 / 樹状突起形成 / DEAF1 / CTBP1 |
研究実績の概要 |
転写関連因子であるDEAF1遺伝子やCTBP1遺伝子の異常により、知的障害や自閉スペクトラム障害の発症が報告されている。しかしながら、これらの遺伝子異常による分子病態メカニズムは不明であり、本研究ではそのメカニズムの解明を目的としている。症例報告された遺伝子変異を基にDEAF1遺伝子の発現抑制ベクターおよびCTBP1遺伝子の変異体プラスミドを作製し、子宮内胎仔脳遺伝子導入法を用いて発達障害の病態を模倣したモデルマウスを作製して形態学的および電気生理学的解析を行った。DEAF1遺伝子については、遺伝子の発現を抑制することで大脳皮質2/3層錐体細胞において樹状突起形成が阻害されること、樹状突起スパインの密度が減少することが明らかとなった。また電気生理学的解析により、発現抑制によって錐体細胞の発火頻度の減少すること、錐体細胞への興奮性シナプス伝達が減弱することも明らかとなった。CTBP1遺伝子については、遺伝子変異体を過剰に発現させると、正常な遺伝子を過剰発現した場合と比較して大脳皮質2/3層錐体細胞の発生期における細胞移動の遅延が確認された。ただし、この細胞移動の遅延は発達とともに解消された。さらに、錐体細胞の樹状突起形成が阻害されることや樹状突起スパイン形成に異常が見られることも明らかとなった。また電気生理学的解析により、錐体細胞への興奮性シナプス伝達の減弱も明らかとなった。ここまでの結果では、DEAF1遺伝子とCTBP1遺伝子はともに、大脳皮質2/3層錐体細胞の樹状突起や樹状突起スパインの形成異常および細胞の興奮性の低下が病態に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
発現抑制ベクターや変異体プラスミドはスムーズに作製でき、マウスへの導入も効率よく行えた。それによりどちらの遺伝子についても有意な表現型が複数確認できており、研究計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は海馬の初代培養神経細胞を用いてin vitroでの形態解析を行う。また軸索伸長への影響も評価する。電気生理学的解析においては抑制性のシナプス伝達の評価やシナプス可塑性の解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子導入効率が良かったため予定よりマウスの使用数が減少した。また試薬の使用量が少ない実験を先に行ったため消費が抑えられた。次年度のマウスや試薬等の物品費に使用する予定である。
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