急性肝障害条件下での血清セロトニン(5HT)濃度の変化を、肝部分切除モデルを用いて調べた。モデルでは、左葉の切除(1/3PH)または左葉と中央葉の切除(2/3PH)を用いた。対照群(Sham)は腹膜切開のみを行った。サンプルは術後2日目と7日目、28日目に採取した。始めに肝臓の再生能力を確認するため、肝切除後の肝臓重量を時系列で測定した。肝切除により術後2日目の肝重量は切除範囲に応じて減少した。減少した肝重量は、切除7日後には術前のレベルまで回復した。 血清5HT濃度は、1/3PH群では術後2日目にコントロール群に比べ有意に低下した。 減少した5HT濃度は、切除7日後に増加傾向を示し、術後28日目には術前のレベルまで回復した。 血清5HT濃度と肝障害の重症度との関連に関して、1/3 PH群の血清トランスアミナーゼ値と血清5HT値の相関を検討した結果、血清AST値とALT値は血清5HT値と相関していた。 血中セロトニンの変化とセロトニン産生との関連を調べるため、小腸におけるtph-1の発現をRT-qPCRを用いて検討した。セロトニン産生の莉速酵素であるtph-1の発現は、コントロール群に比べ、PH群で有意に上昇した。 2/3PH群ではmRNAの発現がより顕著に上昇した。上昇したtph-1発現は7日目に高い傾向を保ち、28日目には正常レベルに戻った。 このように、肝切除による急性肝障害は、小腸でのセロトニン産生を亢進する一方で、血中セロトニン濃度は低下することが明らかとなった。 以上のように肝切除後にセロトニン産生が亢進する一方で血中セロトニン濃度は減少し、またその減少幅が血中トランスアミナーゼの上昇と相関することが明らかとなった。
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