研究課題/領域番号 |
23K15012
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
今井 祐輔 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (50805091)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 星細胞 / PERK / 小胞体ストレス / HCC |
研究実績の概要 |
申請者らは、これまで、肝実質細胞においてPERKがHCC等の肝病態の進展に関与していることを明らかにしてきた。また、申請者らは、LPS等による刺激で活性化した肝星細胞がIL-1βを分泌し、HCC進行を促進していることを報告してきた。PEKRは小胞体ストレスの主要経路のkey moleculeであり、活性化した肝星細胞においてPERKの発現増加が確認されている。本研究では、肝星細胞の活性化およびサイトカイン等の産生においてPERKが果たす役割、さらに肝細胞癌進展への関与について明らかにすることを目的としている。 ヒト肝星細胞株 (LX-2)にパルミチン酸、ツニカマイシンを添加し、小胞体ストレスを誘導したところ、PERKおよびリン酸化eEI2αの発現が増加した。さらに、RT-PCR、ウェスタンブロット解析、ELISAにより、小胞体ストレスにより活性化した星細胞ではIL-1β発現が増加することを明らかにした。また、LX-2にPERK siRNA/plasmidを導入することで、PERK、IL-1βのmRNA及び蛋白の発現が減少、増強した。さらに、PERK siRNAにより、パルミチン酸添加によるIL-1βの発現増加が抑制されることが明らかとなった。 また、LX-2の培養上清でヒト肝癌細胞株 (HepG2)を培養し、増殖能、遊走能、浸潤能を解析した。パルミチン酸を添加したLX-2の培養上清で培養したHepG2は、コントロールを添加したLX-2の培養上清で培養したHepG2より、増殖能、遊走能、浸潤能が促進していたが、PERK siRNAを導入した後にパルミチン酸を添加したLX-2の培養上清では増殖能、遊走能、浸潤能は抑制された。 小胞体ストレスにより肝星細胞が活性化し、活性化した星細胞が肝細胞癌の進展に影響を与えている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小胞体ストレスにより、PERKを介した経路により肝星細胞が活性化しサイトカインの分泌が亢進すること、さらに、小胞体ストレスにより活性化した肝星細胞が、肝癌の表現型に影響を及ぼすことをを明らかにしており、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体ストレス誘導時の肝星細胞におけるPERK経路の下流の分子の発現状況の検討を、RNA-sequencingなどを用いて行う。肝細胞癌(HCC)手術検体を用い、癌部および非癌部の肝星細胞およびPERKについて二重染色をおこないその発現を評価する。また、癌部、非癌部のIL-1β、等の発現をPCRと免疫染色で評価する。また、HCC患者血清中のIL-1βを測定し、stage別に評価を行う。さらに、新たな肝細胞癌治療として、PERK阻害剤の肝がん進展抑制効果について、肝癌細胞株を使用して検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
肝星細胞へPERK siRNAを導入したことによる、肝星細胞のHCCの表現型へのおよぼす影響の変化についての検討を先行して行ったことにより、小胞体ストレス誘導時のPERK経路の分子解析など研究計画の一部が来年度に持ち越しとなった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。次年度に行う解析に充てる予定である。
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