研究課題/領域番号 |
23K15013
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
植田 圭二郎 九州大学, 大学病院, 助教 (90968596)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膵癌 / オルガノイド / 個別化医療 / 超音波内視鏡下穿刺吸引法 / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
1)オルガノイドの樹立・ライブラリー構築: 申請者らは超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)検体を用いて膵癌患者由来のオルガノイド(patient-derived organoid; PDO)樹立を継続し、これまでに30株のPDO樹立に成功した。本研究ではPDO樹立成功率の更なる向上を得るために腫瘍径や病期、腫瘍マーカーなどの臨床病理学的因子がPDO樹立に関連するかを検討し、FNA検体を酵素処理しシングルセル化した段階での生細胞数が重要なPDO樹立成功因子であることを明らかにした。FNA一回穿刺分のみでPDO樹立に十分なサンプル量が得られることを確認しており、膵癌診断時のEUS-FNAから無理なくPDO樹立が可能であることを確認した。 2)オルガノイドの形態学的分類とサブタイプ分類への応用:申請者らはPDOの形態学的分類(A type・B type)を発見しているが、この形態学的分類がMoffittらの従来の分子サブタイプ分類と相関することを明らかとした。トランスクリプトーム解析(RNA-seq)から遺伝子発現パターンの相同性を確認し、代表マーカーであるGATA6(Classical subtype)、CK5(Basal-like subtype)の蛋白発現パターンも相関することを免疫染色で確認した。さらに臨床データとも照らし合わせて、形態学的分類で全生存期間が有意に異なることが明らかとなった。これらの結果から、PDOの形態学的分類が分子サブタイプや臨床経過の予測に有用である可能性があると考えている。 3)薬剤感受性の評価:膵癌の代表的な治療薬であるゲムシタビン(GEM)を使用し、PDOの薬剤感受性をGEMに対するIC50値から評価した。形態学的分類でGEMへの感受性が有意に異なることが再現性をもって確認でき、この結果は実臨床の治療反応性とも相関していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにオルガノイドライブラリーを構築しており、徐々に樹立数も伸びている。予備実験で観察されていた形態学的分類と既報のサブタイプ分類の相関性、臨床データとの関連性、薬剤感受性についてPDO数を増やして検討しても再現性が確認されており、十分に検証できていると考えている。当初の仮説と矛盾せず、実験を進行することができている。現時点までの実験結果を集約し、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに樹立したPDOを用いた遺伝子発現解析から、膵癌は既報の通り患者ごとの差が大きい非常にヘテロな集団であることを確認した。この点においても患者一人ひとりの腫瘍の性質を反映するPDOが膵癌研究に適していると考える。現在、PDOの樹立数は少しずつ増加しているもののまだ十分とはいえず、今後もPDOライブラリーの拡充を図る。 また、現在はPDOを用いたin vitroでの薬剤試験のみであるが、今後は免疫不全マウスへの移植の実験系を確立することで、in vivoでの薬剤試験や増殖・転移に関わる因子のさらなる研究を進めていく(=膵癌の本態解明へ向けた研究)。 実臨床への応用としては、PDOの形態分類から分子サブタイプをより短期間で予測する(=Turn around timeの短縮)により、治療選択へとつなげていきたいと考えている。また、PDOを用いた薬剤評価に関しても今後オキサリプラチンやイリノテカン、パクリタキセル、5-FUなどの膵癌の既存薬に加え、分子標的薬など可能な限り網羅的に評価し、膵癌の新たな治療標的の探索を行う(=PDOを用いた個別化医療の推進へ向けた研究)。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、PDOの樹立数は徐々に増加しているもののまだ十分とはいえず、まとまったサンプル数を確保することが困難であったことがあげられる。トランスクリプトーム(RNA-seq)解析にかかる研究費やシーケンスのqualityの問題から、一検体毎の評価は困難であり、一定のサンプル数が確保された時点で実際の解析を行う予定である。また、薬剤感受性評価に関してもゲムシタビンしかできておらず、その他の薬剤(オキサリプラチンやイリノテカン、パクリタキセル、5-FUなど)の購入に至っていないことも一因である。次年度使用額は引き続き、PDO樹立とトランスクリプトーム(RNA-seq)解析、薬剤感受性に用いる試薬の購入、感受性評価などに使用する予定である。また、今後は免疫不全マウスへの移植の実験系を確立することで、in vivoでの薬剤試験や増殖・転移に関わる因子のさらなる研究を進めていく予定であり、マウス購入・飼育の費用としても使用する予定である。
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