研究課題/領域番号 |
23K15033
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
船戸 和義 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (30972872)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肝癌 |
研究実績の概要 |
肝細胞癌に対して用いられるようになったマルチキナーゼ阻害薬のカボザンチニブは、他の成因による背景肝疾患を持つ肝細胞癌(HCC: Hepatocellular carcinoma)と比較して、B型肝炎ウイルス(HBV)を背景とした肝細胞癌 (HBV-HCC) で治療成績がより良好であることがサブ解析で報告されているが、その分子機序は不明である。本研究では、HBV自然感染系および遺伝子ノックアウト・ノックイン技術を用いて、カボザンチニブがHBV複製およびHBV-HCCに及ぼす効果を検証し、その分子機構を解明する。本研究によって、HBV-HCCの薬物治療におけるレジメン選択最適化の根拠を提供するだけでなく、「背景肝疾患の成因に応じた個別化治療」という新たなコンセプトの提唱・研究分野の開拓に繋がることが期待される。最新の肝癌診療ガイドラインでは、肝細胞癌の薬物療法の一次治療としてはアテゾリズマブ+ベバシズマブの併用療法が推奨されている。二次治療以降ではカボザンチニブのほか、ソラフェニブ、レンバチニブ、レゴラフェニブ、ラムシルマブの5つの選択肢があるが、二次治療で用いるべき薬剤の順序は決まっていない。そこで本研究では、「カボザンチニブが他の背景肝疾患を成因とする肝細胞癌よりもHBV-HCCにより奏功するかもしれない」という現在の臨床的な知見の背景に基礎的な根拠があるか、ということを問いとして設定し検討する。本年度は、遺伝子編集手法でHBVゲノムの一部を肝癌細胞に組み込みその癌細胞ではカボザンチニブが有効であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カボザンチニブによるMET阻害効果がHBV複製に与える影響を検討する。既にHBV自然感染系において、MET阻害がHBV複製に影響を与えることを見出しており、HBVのライフサイクルに即したメカニズムの検討を行っている。その過程で、肝細胞増殖因子 (HGF) -MET経路の下流因子であるsignal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)が責任分子候補であることを見出しているが、本研究でも、MET阻害効果も持つカボザンチニブによるSTAT3を介したHBV-RNA産生阻害効果があることを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
「特定部位にHBVの組み込みのある肝細胞癌」におけるカボザンチニブの効果を検証する。過去の研究から、TERTプロモーター部位にHBV組み込みが起こりやすいほか、組み込まれるHBV側に関してはHBVゲノム上のエンハンサーI領域が組み込まれやすいことが知られている。そして興味深いことに、このエンハンサーI領域には上に述べたSTAT3の結合配列が含まれている。これらのことから、「TERTプロモーター部位へ組み込まれたHBVのエンハンサーI領域へSTAT3が結合することで、TERTの発現増加や細胞増殖に関与していること」「それらがカボザンチニブによって阻害されること」を仮説として検証することを予定している。
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