研究課題/領域番号 |
23K15052
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
田島 知明 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80974328)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゲル / ゲル浸漬下内視鏡切除 / 浸水下内視鏡切除 / 内視鏡的粘膜切除術 / 内視鏡的粘膜下層剥離術 / 消化管腫瘍 |
研究実績の概要 |
本研究は、消化管腫瘍に対する内視鏡切除術の際に内視鏡用視野確保ゲルを用いることで、ゲルの使用が治療中の内視鏡視野の向上とともに、内視鏡の操作性の向上および患者の苦痛軽減(鎮静剤使用量の低減)へ寄与するかを検証し、“ゲル浸漬下内視鏡切除術”という新たな低侵襲治療法を確立することを目的としている。現状、消化管腫瘍の内視鏡切除において、ゲル浸漬単独での内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を38例(内訳:食道28例, 十二指腸10例)、浸水下におけるESDにゲルを併用した治療を15例(内訳:胃2例, 十二指腸3例, 結腸直腸10例)の合計53例に行った。その結果、9割以上の症例でゲル使用による内視鏡視野の改善効果が確認された。有害事象は1例も認めていない。さらにCO2送気下に行う通常の内視鏡切除術と比較し、浸水下やゲル浸漬下では腸管が虚脱することで、腸管内圧の上昇が抑えられるため患者の苦痛の訴えも少ない印象であり、治療における鎮静剤の使用量も低減できている。上記、ゲル浸漬下内視鏡切除術の実施症例の中で治療困難性の克服にゲルの使用が有効であった症例について報告した(食道:Endoscopy, 2024. 胃:Endoscopy, 2023. 十二指腸:Progress of Digestive Endoscopy, 2023.)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全ての消化管臓器(食道・胃・十二指腸・大腸)においてゲル浸漬下内視鏡切除が有効であった症例に関する論文報告を行い、計3編が国際誌に掲載された(Endoscopy,2023:1編. Endoscopy,2024:2編)。さらに、複数の所属学会(日本消化器病学会,日本消化器内視鏡学会, 日本消化管学会など)や研究会等において研究成果を報告した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、ゲル浸漬単独で行う内視鏡的粘膜下層剥離術を中心に行った。しかし、ゲル単独の場合、ゲルの消費量増加に伴う治療コストの上昇という懸念点が生じた。普及する治療法の開発のためには、治療にかかるコストの削減は重要な課題と考えられる。そこで次年度は、ゲル浸漬単独の手法は用いず、主に浸水環境下で内視鏡切除を行い、その際の内視鏡視野改善目的に補助的に必要最小限のゲルを用いる手法を主に行い、治療コストの低減を図る。さらにその手法の実践に最適な機器のセッティングの開発や、治療自体の安全性および有効性を具体的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、実臨床におけるゲルを用いた内視鏡切除の実践およびデータ集積を中心に行い、幸いにも複数の症例報告論文が掲載/受理され [Progress of Digestive Endoscopy, 2023. Endoscopy, 2023.Endoscopy, 2024]、国内の学会 [日本内視鏡学会、日本消化器病学会、日本消化管学会など] で報告を行うことができた。初年度の本研究費使用額は主に物品費に用いた。 【次年度使用額が生じた理由】初年度において、研究対象症例数が当初予定していたものより少なく、研究の有効性・安全性を証明するためには次年度も引き続き症例集積・解析の継続が必要と判断した。さらに研究内容、結果等に関連した複数の英文論文の作成・投稿、国際学会発表等を次年度に行うことを計画した。そのための必要経費として計画的に研究費を残したため次年度使用額が生じた。 【使用計画】研究データの収集、保存および編集に必要な機器の購入は前年度同様に物品費として計上する。また英文論文の作成・投稿、学会での研究成果の発表のため、研究費の一部は論文校正代、成果投稿料や学会旅費等にあてられる。
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