腸内微生物叢と消化器疾患の間には関連性があると報告されている。次世代シーケンスの導入により、大量のゲノム配列の決定を処理できるようになり、これまで無菌であると考えられていた組織内の細菌叢を同定できるようになった。胆管もそのような組織の 1 つだが、胆汁中細菌叢に関する研究はほとんどない。 そこで、本研究では、内視鏡的逆行性胆管膵管造影法 (Endoscopic retrograde cholangiography: ERC)で採取された胆汁に含まれる細菌叢のプロファイルを、胆管癌と総胆管結石とで比較した。本研究は横断研究であり、細菌叢の測定には16S rRNA ナノポアシーケンスを用いた。胆管癌患者からの 14 件と総胆管結石患者からの 45 件の合計 59 件の胆汁サンプルを分析した。また、液体クロマトグラフィー質量分析 (LC/MS) を使用して胆汁酸のプロファイリングを行った。 すべての胆汁サンプル中に細菌 DNA の存在が確認された。ナノポアシーケンスの配列決定により、総胆管結石に関連するサンプルより胆管癌由来のサンプルで、Bacteroides や Peptostreptococcalesを含む偏性および通性嫌気性菌が特徴的であることがわかった。また、胆汁酸においては、二次胆汁酸であるリトコール酸の濃度が、総胆管結石と比較して胆管癌由来のサンプルにおいて有意に減少していることわかった(p < 0.05)。 今回の結果は、胆管内細菌叢の存在を確認し、これが胆管癌と総胆管結石といった胆道病疾患の存在下では異なることが示唆された。
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