研究課題/領域番号 |
23K15065
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 琢磨 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (80972801)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 膵癌 / 二重鎖RNA / ノンコーディングRNA |
研究実績の概要 |
本研究は、膵癌で高発現するHuman Satellite II(HSATII) RNAが発癌促進に関連していると考え、そのメカニズムの解明を通じて膵癌の進展予防を目指した新規治療戦略への貢献を目標としている。HSATIIなどの反復配列は同様の配列が高度に繰り返されるため、反復配列同士で二重鎖RNAを形成しやすいことが報告されている。そこで、一本鎖HSATII RNAの発癌促進とは異なる視点から、膵癌で二重鎖HSATII RNAが有する分子生物学的な機能の解明に取り組んでいる。 ヒト膵癌組織や膵癌細胞株を用いて二重鎖RNAの高発現やHSATII RNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両者の発現を確認しており、膵癌における二重鎖HSATII RNAの存在が示唆された。二重鎖HSATII RNAが膵癌の悪性化に関わる機序を探索するために、細胞内で二重鎖RNAを形成するコンストラクトを作成して、二重鎖HSATII RNAを発現した膵癌細胞株で上皮間葉転換(EMT)が誘導された。その詳細なメカニズムの解明を来年度以降の課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌における二重鎖HSATII RNAの発現を示し、in vitroで二重鎖RNAを発現させるコンストラクトの作成に成功した。このコンストラクトを用いて、二重鎖HSATII RNAを発現した膵癌細胞株でEMTが誘導されるという表現型を得られているが、その分子機序解明のための条件検討に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
二重鎖HSATII RNAに特異的に結合するSTRBP(spermatid perinuclear RNA-binding protein)というタンパクをすでに同定しており、in vitroで表現型を検討する段階に至っている。in slicoでSTRBPはEMTに関連することが報告されているので、二重鎖HSATII RNAとSTRBPの相互作用の観点から分子生物学的な検討を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
二重鎖HSATII RNAを発現した膵癌細胞株でEMTが誘導されるという表現型を得られているが、その分子機序解明のための条件検討に時間を要している。しかし、二重鎖HSATII RNAに特異的に結合するタンパク質はすでに同定できており、来年度はこれらの相互作用の観点から分子生物学的な検討を計画している。
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