本研究では、ヒト多能性幹細胞より心筋細胞を大量に作出し、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウトスクリーニングを行い、心筋細胞にとって必須遺伝子群の同定とおよび心不全に対する治療標的としての評価を行うことを目的して研究を実施した。 ヒトiPS細胞から心筋細胞を誘導し、さらに幼弱心筋細胞の増殖を引き起こすことで大量の心筋細胞を作出することに成功した。これらのヒト心筋細胞を用い全ゲノムを標的として、細胞生存を指標としたCRIPSRノックアウトスクリーニングを実施した。 当初の計画に基づき、計4回のスクリーニングを実施した。スクリーニングにおいてライブラリーの多様性が十分に保たれていることを確認したのちに、ノックアウトによって心筋細胞数の減少が認められた遺伝子を心筋細胞にとって必須遺伝子群とした(FDR<0.05では29遺伝子。)。これらの多くはリボソーム機能に関連する遺伝子であり、スクリーニングの結果は妥当であると考えられた。これらの必須遺伝子群には心筋細胞にとってこれまで役割が不明な遺伝子も含まれており、引き続きこれら機能未知の候補遺伝子の詳細な評価を継続する予定である。
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