研究課題/領域番号 |
23K15133
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
中尾 恭久 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (60896348)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 心不全 / 心肥大 / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
心臓は圧負荷などのストレスに対する適応現象として心肥大を生じるが,その応答機構の破綻によって心不全が生じるとされる. 近年,心不全に対して様々な治療薬が開発されているが,依然として予後不良の疾患であり,新規治療標的の確立が必要である. 申請者らは,より病態進展の中核をなす分子を同定するため,独自に作製した心不全病態モデルマウスを用いてオミックス解析(Bulk RNA-seqとsingle nucleus RNA-seq ;snRNA-seq)を実施し,分子Aの同定に成功した.免疫組織学的検査や空間トランスクリプトーム解析の結果から分子Aが心不全発症後の左室心筋中層に特異的に高発現であることを確認した.一方で,心不全発症に至る前の代償された表現型である左室肥大では,分子Aは低発現であった. さらに,snRNA-seq解析と空間トランスクリプトーム解析の結果から,心不全マウス群から分子Aを発現するクラスターを同定し,そのクラスターが心筋細胞クラスターと細胞間相互作用を生じている可能性を示す結果が明らかとなった.また,in situ hybridizationの結果から心筋周囲の細胞集団に分子Aが発現していた. 以上の結果から,分子Aが代償期である心肥大の表現型から非代償期である心不全の表現型へと至る過程に関与する可能性が示唆された. 分子Aノックアウトマウスの作製にも成功しており,分子Aの機能解析を行うための次実験に向けて現在繁殖を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子Aノックアウトマウス作製を行っていたが,ノックアウトマウスと同室のマウスの汚染によりノックアウトマウスの繁殖停止を余儀なくされたため分子Aの機能解析については遅れが生じている.トランスクリプトーム解析を中心としたドライ解析については概ね順調に進んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
再度分子Aノックアウトマウスの繁殖を行う.分子Aノックアウトマウスに対して心不全誘導を行い,分子Aの欠損が心筋保護的に働くか否か検討を行う.さらに,snRNA-seq解析を行うことで,分子A欠損の下流シグナルへと与える影響を調べることで,心不全進展における分子Aが果たす役割を解明する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究を効率的に推進したことやノックアウトマウス作製費用を抑えることができたことにより発生した未使用額である.次年度請求額と合わせ,分子Aノックアウトマウスを用いた機能解析を行うために使用する.
|