研究課題
動脈硬化や虚血性心疾患を基盤とする心血管疾患での無菌性炎症が、炎症と細胞死を制御するNLRP3インフラマソームを介して惹起されることが示されている。一方で最近、2本鎖(dsDNA)を認識して形成されるAIM2インフラマソームも無菌性炎症を惹起することが報告されているが、その心血管病態での役割や他のDNAセンサーとのクロストークについては、未だ不明である。申請者はこれまで、AIM2インフラマソームが急性腎障害において重要な役割を果たしており、AIM2を欠損させると他のDNAセンサーでるSTING経路が活性化することを報告している。今回、心血管疾患での役割として、Candida albicans培養上清(CAWS)投与によるマウス川崎病様血管炎モデルを作成して解析を行った。AIM2欠損マウスでは、血管炎の程度や発生率が有意に低下するとともに、病変部でのマクロファージなどの炎症細胞浸潤や線維化も抑制されていた。また、細胞実験によりAIM2活性化機序について検討したところ、樹状細胞においてCAWSがdsDNA障害と核膜の破綻を引き起こし、細胞質内に漏れ出たdsDNAによってAIM2が活性化されている可能性が示された。さらに、このAIM2インフラマソーム活性化には酸化ストレスが寄与していることも示唆された。これらのことから、川崎病様血管炎においてAIM2インフラマソームが重要な役割を果たしていることが明らかになり、AIM2が新たな治療標的となり得ることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
川崎病様血管炎モデルでの表現型や分子機序の解析は順調に進んでおり、CAWSによるdsDNA障害と核膜破綻という新たな知見も得られていることから、概ね順調に進展していると判断した。
川崎病様血管炎モデルについて、酸化ストレスおよびミトコンドリアの役割をさらに詳細に解析していく予定であり、今年度中の英文論文投稿を目指して研究を進めていく。また、他のDNAセンサーであるSTING経路についてもさらに解析を行う予定である。
AIM2についての解析は順調であるが、もう一つのDNAセンサーであるSTING経路の解析が十分に遂行できなかった。従って、この解析に時間的な余裕が必要となったことから、次年度使用が生じている状況である。次年度には、AIM2欠損状態でのSTING/TBK1/IRF3/NF-κBの活性化およびTNFα/IFNβ産生を解析し、STING経路への影響を検討する予定である。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 686 ページ: 149158~149158
10.1016/j.bbrc.2023.149158
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 180 ページ: 58~68
10.1016/j.yjmcc.2023.05.003
https://www.jichi.ac.jp/inflammation/