研究実績の概要 |
GH欠乏状態での動脈硬化における脂肪組織(プロ)レニン受容体の役割を解明することを目的とし、まず、非機能性下垂体疾患患者171例を対象に、GH分泌能と炎症マーカーである血中高感度CRP値との関連を後ろ向きに検討した。高感度CRPは、GH分泌能を示すGHRP-2負荷後GH頂値(GHpeak)と有意な負の相関を示し(r = -0.50, P < 0.001)、重症GH分泌不全合併例で非合併例と比べ有意に高値だった(P < 0.001)。高感度CRPの重回帰分析では、他の下垂体前葉ホルモンを含む多変量で調整してもGHpeakは有意であり(β = -0.343, P = 0.001)、GH以外の前葉ホルモン欠乏患者60例を除外しても有意(β = -0.263, P = 0.009)だった。下垂体手術を行った者の手術1年後の高感度CRPとGH分泌能の変化量(Δ)を縦断的に検討すると、Δ高感度CRP (60例)は、ΔGHpeakと有意な負の相関を示した(r = -0.46, P < 0.001)。これらのことからGHの分泌低下が炎症の惹起に関連することが示唆された。 次に、成人GH分泌不全症に対するGH補充療法と炎症の関連を前向きに観察した。8例の患者(平均50歳、男性4例、BMI 31.9 kg/m2)において、6ヶ月のGH補充療法後に高感度CRPが有意に低下することが示された(P = 0.001)。一方、GH補充療法前後で体組成や脂質代謝マーカー、肝機能に有意な変化は見られなかった。高感度CRPとGH分泌能の変化量(Δ)の間には有意な負の相関が見られた(R = -0.78, P = 0.023)。GH補充療法が炎症に対して抑制的に作用することが示唆された。現在、血中(プロ)レニン受容体測定を含めさらなる解析を行っている。
|