転移性脳腫瘍は腫瘍が脳に転移したものであり、肺癌や乳癌、大腸癌からの転移が多く、転移性脳腫瘍の半数は肺癌であり、肺癌は最も脳転移をきたしやすい疾患である。また、肺癌患者の約40%に脳転移が生じるとされている。近年、肺癌においてはドライバー遺伝子変異に即した新規薬物療法や免疫チェックポイント阻害剤の選択肢が増え、肺癌患者の生命予後は大きく改善しているが、脳転移性症例に対する有効な治療レジメンは限定的である。薬物療法以外にも手術、放射線治療(定位放射線治療、全脳照射)、あるいはこれらを組み合わせた治療が選択されるが、肺癌の脳転移性症例の生命予後は極めて不良である。脳転移に対する新たな治療法の確立が重要であり、肺癌が脳転移をきたす際にどのような病態が生じているのか、分子機序を解明するべく研究を継続している。 手術で肺癌の原発巣を切除した5症例と肺癌からの脳転移を切除した5症例より、それぞれRNAの抽出を行い、RNAシークエンスを実施して機能性RNA発現プロファイルの作成を行った。それぞれのRNAシークエンスデータを比較してヒートマップ、ボルケーノプロットの作成を行い、脳転移巣で特異的な発現を示す機能性RNA分子を探索した。候補として複数のマイクロRNAが挙がっており、それぞれのマイクロRNAに対して機能解析を実施して、その中から脳転移に強く関与が考えられるマイクロRNAの有無の検証を行っている段階である。
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