研究実績の概要 |
本研究では、肺腎連関症候群の機序としてSemaphorin class 3C(SEMA3C)の役割に着目した。Semaphorinは神経軸索誘導、抗炎症、免疫調整などの作用をもつ分泌蛋白で、中でもSEMA3Cは胎生期の腎臓発生や肺胞形成に関わること (Reidy, Pediatr Nephrol 2011)SEMA3C補充で肺胞損傷が修復されることが報告されている(Arul, PLoS One 2013)。 一方、腎臓で発現するSEMA3Cが腎や他臓器の障害にどのように関与するかについては、これまで検討されていない。 本研究の目的は肺・腎疾患が合併する機序とSEMA3Cが関与するかを明らかにすることである。「腎尿細管に発現し、抗炎症・組織修復作用をもつSEMA3Cが肺・腎両臓器を保護する」との仮説を立て、遺伝子改変動物モデルと患者・健診受診者コホートを用いて、腎尿細管SEMA3C発現が肺・腎疾患の発症進行に関与するか明らかにする。 <Clinical research>山形大学で2017-2021年に腎生検を行った191症例を対象に,血清SEMA3C濃度と尿細管障害マーカーとの相関を検討した.スピアマンの相関解析では血清SEMA3Cと尿中β2MGは負の相関を示した(r=-0.208, P=0.005). <In vivo>近位尿細管特異的SEMA3C ノックアウトマウス群とコントロール群に対して,14週間アデニン食負荷によりCKDを発症させた.両群の腎組織で間質線維化の程度を比較した.ノックアウト群で間質線維化が抑制された. SEMA3Cは尿細管障害,間質線維化と関連することが示唆された.
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