研究課題/領域番号 |
23K15251
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中村 恭菜 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60908523)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腎臓線維化 / 急性腎障害 / 好中球 / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は進行性の腎機能障害を呈する症候群であり,腎機能が低下すると組織が低酸素に陥り,尿細管萎縮や腎間質の線維化が進み,その反応は不可逆的である.ゆえに腎臓線維化に関わる因子の同定やその意義を解明することは,CKD治療のターゲットとなりうる.研究代表者は,RNA-seqとChIP-seqを組み合わせた網羅的解析にて,腎臓の間質線維化の抑制に関わる新たな因子としてBst-1(Bone marrow stromal cell antigen-1, CD157)を同定した.本研究では,Bst-1の腎臓における分布・役割・機能を解明し,腎臓線維化に関わるメカニズムの解明を目的とする. 本年度は,広くBst1の腎臓での役割を評価するために,急性腎障害モデルを用いた実験を行った.両側腎虚血再灌流障害を急性腎障害モデルとして用い,骨髄キメラマウスを作成し骨髄由来細胞におけるBst1の役割を評価した.Bst1ノックアウトマウス(Bst1-/-)では両側腎虚血再灌流障害が軽減し,その現象は造血細胞由来のBst1に依存した.続いて脾臓と骨髄のフローサイトメトリーを行い,Bst1はB細胞,好中球に主に発現することを同定した.さらに,野生型マウス(Bst1+/+)の好中球をBst1ノックアウトマウスに養子移入すると,Bst1ノックアウトマウスで見られた腎障害軽減効果は消失した.これらの結果から,好中球に発現するBst1が腎虚血再灌流障害の誘導に関与すると考えられ,本成果を査読付き雑誌論文にて公表した.また,骨髄由来細胞のみならずBst1の腎臓での発現部位を同定するためにsingle cell RNA-seqを行い,血管内皮を含む複数の細胞にBst1が発現することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画とは異なるが,急性腎障害におけるBst1の役割を評価・同定出来たため.
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今後の研究の推進方策 |
single cell RNA-seqより得た腎臓のBst1陽性細胞,特に血管内皮細胞が腎障害時の役割の解明を目指し,急性・慢性腎障害モデルを用いた評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
出産・育児休暇により,実験が滞る時期があったため.延期となった旅費に充てる予定である.
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