【実験①】C57BL/6Jマウス(12週齢)をControl群(Vehicle投与)、HIF-PhD阻害薬群(10mg/kg.・週5日・4週間投与)に分けて血液・尿・肝臓における銅排泄遺伝子を比較した。また近位尿細管細胞(LLCPK1)や肝培養細胞(HepG2)、にCuSO4を投与して銅過剰による細胞障害を評価した。HIF-PhD阻害薬群では血清銅値、尿中銅、AST、ALTは上昇し、肝臓における銅排泄遺伝子ATP7Bは低下した。ATP7B遺伝子発現と血清銅と負の相関を認め、銅排泄の責任遺伝子であることが示唆された。また、近位尿細管培養細胞に銅を負荷すると、線維化マーカーであるαSMAは上昇したことから、肝排泄能低下に伴い尿中に増加した銅が腎線維化を誘導することが示唆された。 【実験②】 肝障害による銅代謝の変化を確認するため、四塩化炭素(CCL4)投与により肝障害を誘発した。6週齢のC57BL/6Jマウスに5%CCL4を5mL/kgを週3回・4週間腹腔内投与して慢性肝障害群(n=4)とControl群を作成して、10週齢での血清銅と肝臓における銅排泄遺伝子との関連を検証した。慢性肝障害群では血清銅値、尿中銅排泄は上昇し、肝臓における銅排泄遺伝子ATP7B・CTR1は低下した。ATP7B・CTR1遺伝子発現と血清銅と負の相関を認めた。 【まとめ】 HIF-PhD阻害剤による銅の上昇は、肝障害を反映している可能性があり、過剰な銅は腎線維症に影響することに注意が必要である。今後は肝障害の原因がHIF1αやHIF2αを介しているかを検証していく。
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