研究課題/領域番号 |
23K15274
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西村 友紀 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90812420)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 薬剤性過敏症症候群 / ヒトヘルペスウイルス6 / 再活性化 / 持続感染 / 合併症 / 自己免疫疾患 |
研究実績の概要 |
重症薬疹の1つである薬剤性過敏症症候群(DIHS)では、発症2~3週間後にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化を生じ、症状の再燃や重症化と関連することが知られている。また、DIHSのもう一つの特徴として、回復期に1型糖尿病や慢性甲状腺炎などの自己免疫疾患を発症することがあげられる。 我々はこれまでに、DIHSの一部の患者でHHV-6の再活性化後に持続感染を生じること、またこれらの持続感染患者は回復期に高率に自己免疫疾患を発症することを明らかにした。さらに、HHV-6持続感染患者の特徴を検討したところ、持続感染群は一過性群と比較して、急性期における皮膚粘膜症状が有意に重症、DIHSの予後予測スコア(DDSスコア)が有意に高値、HHV-6およびCMVの再活性化時の血中ウイルスDNAピーク値が有意に高値、血清中IL-4、IL-5、可溶性IL-2受容体が有意に高値を示すことが判明した。 そこで本研究では、HHV-6持続感染および自己免疫疾患発症のメカニズムを明らかにするため、HHV-6持続感染患者および一過性感染患者について、急性期と回復期のPBMCを用いてシングルセル解析を行った。その結果、一過性感染群急性期にはCD14単球系細胞の増加および活性化がみられたのに対して、持続感染群急性期では単球系細胞の増加・活性化はほとんどみられなかった。DIHS初期にウイルスに対する抗原提示を含む獲得免疫への橋渡しとなる自然免疫応答が不十分であり、このことにより持続感染を生じる可能性が示唆された。また、持続感染したHHV-6が主に存在するCD4陽性セントラルメモリーT細胞において、免疫関連遺伝子を含む複数の遺伝子の発現亢進がみられ、自己免疫疾患発症への関与が推測された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HHV-6一過性感染群の急性期には単球系細胞の増加・活性化がみられたのに対して、持続感染群では急性期の単球系細胞の活性化や増加はほとんどみられなかったことより、発症早期の単球系細胞の反応性の低下がその後のHHV-6持続感染に関わっている可能性が示唆された。 また、HHV-6が持続感染するCD4陽性セントラルメモリーT細胞において、免疫関連遺伝子を含む複数の遺伝子の発現亢進がみられ、自己免疫疾患発症への関与が推測された。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに見出した自己免疫疾患関連遺伝子ならびにHHV-6持続感染関連遺伝子の候補について症例数を増やして検証をすすめるとともに、これらの候補遺伝子の機能解析を計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
データ整理などの人件費を計上していたが研究者自身で行った。
|