本研究の目的は、細胞内エネルギー代謝の観点からアトピー性皮膚炎(AD)病変部における病原性T細胞の1つと考えられているレジデントメモリーT 細胞(TRM)の活性化機構の解析により、AD病態における活性化機序の解明を進めることである。 中断前は、まだ多くのAD患者サンプルを集めている段階であり、一部免疫染色を行ったがまだ十分な結果を得られていない。留学後は、以下のように研究を再開していく予定である。まずAD患者皮膚T細胞を用いた解析として、AD病変部TRMのエネルギー代謝評価系として、免疫組織学的解析を行った。具体的には、AD患者の皮膚組織を用いて、TRMの染色に加えGlut-1、 Glut-3(グルコース代謝の評価指標)、ACOX1(脂肪酸代謝の指標)との免疫染色を行い評価する。さらに、AD患者の皮膚生検余剰組織からT細胞を培養・増殖させた後にTRMをセルソーターで分離し、細胞内フラックスアナライザーを用いて、細胞内エネルギー代謝状態をリアルタイムで定量測定する予定である。その後、上記の解析で得られたTRM細胞内エネルギー代謝系の特徴をもとに、TRMの培養系に各種細胞内エネルギー代謝阻害剤を加え、TRMの活性化(サイトカイン産生能)、増殖能に与える影響を検討する。 さらに、AD動物モデルを用いて、候補細胞内エネルギー代謝経路の阻害剤を皮膚に局所投与、または遺伝子欠損マウスを用いた検討を行い、T 細胞の細胞内エネルギー代謝制御のin vivoにおける意義・病態形成・再発に与える影響についてさらに検証する予定である。
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