研究課題/領域番号 |
23K15323
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
葉名尻 良 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (40861810)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | CAR-T細胞療法 / CRISPRスクリーニング / 免疫細胞療法 / HLA / キメラ抗原受容体 |
研究実績の概要 |
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T)療法において、初回治療抵抗性を示す症例があることが臨床上の問題となっているが、その詳細な機序は解明されていない。加えて、DLBCLの約半数でHLA発現の欠損を認めるが、HLA発現低下がCAR-T治療抵抗性に与える影響は不明である。リンパ腫細胞が初回CAR-T療法抵抗性となる分子機構を解明することにより、CAR-T療法の治療成績を向上させる新たな治療戦略につながると考えられる。我々は最近、DLBCLに対しCAR-T療法を受けた患者臨床検体を解析し、治療反応良好例ではCAR-T投与後10日前後で、CD4+ CAR-Tが増加していることを見出した。このことは、CAR-TはHLA非依存的にリンパ腫細胞の標的抗原を認識するが、加えて標的細胞のHLA分子との結合がCAR-Tの細胞内シグナルをさらに増幅させる可能性を示唆している。したがって、リンパ腫細胞表面でHLA分子が欠損すると、CAR-Tの反応性が減弱し、CAR-T療法抵抗性につながる可能性がある。本研究課題では、CAR-Tの初回治療抵抗性の原因がリンパ腫細胞の機能喪失型遺伝子異常にあるのではないかという仮説を、HLA欠損リンパ腫細胞に着目し、最終的にはCRISPR-Cas9全ゲノム機能的スクリーニング法を用い検証することを目的とした。 今回、リンパ腫細胞株においてHLAクラスII抗体で細胞表面のHLAをブロッキングすることにより、CAR-Tからの炎症性サイトカイン産生が低下することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
HLA欠損リンパ腫細胞に対するCAR-Tの反応性を検証するために、HLA欠損リンパ腫細胞を作成する必要があり、複数のリンパ腫細胞株のHLAをCRISPR-Cas9法でノックアウトすることを試みているが、HLAクラスIIのノックアウトに難渋している。そのため、CRISPR-Cas9全ゲノム機能的スクリーニング法によるリンパ腫細胞の機能喪失型遺伝子異常の検証に進めていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ腫細胞株をHLA抗体でブロッキングし、HLA欠損リンパ腫細胞として用いることにより、HLA発現欠損リンパ腫細胞でのゲノムワイドCRISPRライブラリースクリーニングを行う。実際にHLA抗体によるブロッキングにより、CAR-Tの反応性が変化することを確認している。また、エピジェネティック阻害剤によりHLA欠損リンパ腫細胞のHLA発現が上昇するという報告が多数あるため、エピジェネティック阻害剤自体がCAR-Tに与える影響について加えて検討する。
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