研究課題/領域番号 |
23K15328
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
古田 梨愛 熊本大学, 病院, 特任助教 (10962227)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | HTLV-1 / ATL |
研究実績の概要 |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)はCD4陽性T細胞の悪性腫瘍である成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスである。HTLV-1のレセプターはグルコーストランスポーターGLUT-1であり、CD4陽性T細胞だけでなく、様々な細胞に感染しうる。しかし、生体内ではHTLV-1プロウイルスはT細胞を主体に検出され、造血幹細胞へは感染しないとされてきた。我々は次世代シークエンサーを用いてHAM患者の末梢血からCD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、B細胞、単球、好中球を分取し、HTLV-1の組込部位を詳細に解析し、全ての血球系統に共通して存在する組込部位を検出した。この結果から造血幹細胞レベルでHTLV-1感染が起こっていることが示された。造血幹細胞の存在する骨髄は低酸素環境であり、ウイルス複製に必須のウイルス遺伝子Taxを発現して新規感染を起こし、HTLV-1のリザーバーとなっていることが推測された。さらに、シングルセル解析にてATL患者の末梢血中にATL細胞とプロウイルス組込部位が同一である樹状細胞様の形質を有する細胞が存在することも見出しており、宿主免疫への関与も示唆される。骨髄におけるHTLV-1感染細胞の動態を検索するため、HTLV-1キャリア、ATL患者における骨髄標本を用いて組織学的解析を行うためのサンプルをピックアップした。今後、骨髄生検組織を用いてHTLV-1感染細胞や造血幹細胞の骨髄微小環境の空間的解析を行う。 これまでATL患者における骨髄所見については研究が少なく、骨髄微小環境を含めた解析を行うことで、HTLV-1の感染戦略についてさらなる知見が得られると考えられる。 今後ATLハイリスクキャリアにおけるゲノム変異解析、ウイルス遺伝子の発現解析、クローナリティ解析、トランスクリプトーム解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HTLV-1感染造血幹細胞の骨髄中での位置関係を調べるため、HTLV-1キャリア、ATLの骨髄浸潤あり、骨髄浸潤なしの症例のサンプルを用いて、今後免疫染色を行う症例を抽出した。 2023年7月より産前休暇に入ったことから、その時点で研究を中断している。2024年5月に復帰予定であり、研究再開を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
ATL発症ハイリスクキャリアの検体を用いて各血球系統におけるHTLV-1感染動態と遺伝子発現プロファイル解析、遺伝子変異解析を行う。HTLV-1感染細胞はCADM1を発現することから、CADM1をマーカーとして各血球成分におけるHTLV-1感染細胞、HTLV-1非感染細胞を分取してゲノム変異の解析、ウイルス遺伝子の発現解析、宿主細胞のトランスクリプトーム解析を行い比較検討を予定している。同種の感染細胞と非感染細胞の遺伝子発現を比較することで感染機構への詳細な解析が可能となる。 またATL発症に関与する骨髄微小環境の解析として、骨髄組織の多重染色を行うことでHTLV-1感染細胞や造血幹細胞の骨髄中の空間的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
7月より産前休暇を取得したこと、また今後次世代シークエンサーで多くの検体を解析する必要があるため、研究費を繰り越している
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