研究課題
まず実験系の確立として、健常人末梢血単核球を単離しMitomycin C存在下で48時間培養し薬剤性のDNA損傷応答を与え、細胞老化関連遺伝子(CDKN1A, CDKN2A)のmRNA発現量をリアルタイムPCR法で定量し、これらの遺伝子発現誘導及び実験系が機能していることを確認した。次に肺微小血管内皮細胞株を低酸素環境下(酸素濃度1%)で培養するIn vitro実験を行い、CDKN2A、またIL-6のmRNA遺伝子発現を定量し評価したが、低酸素培養後にCDKN2AやIL-6の発現上昇は認めず、低酸素培養により細胞老化の誘導及びサイトカイン発現の誘導は認められなかった。培養期間を2-7日で変えて実験を行ったが同様の結果であり、低酸素培養群では細胞数の減少傾向が強く、細胞老化誘導による細胞死が結果に影響している可能性を考えた。一方で健常人および全身性強皮症(SSc)患者の末梢血よりCD14陽性単球を単離しM-CSF存在下で48時間培養したところCDKN1A、CDKN2AのmRNA発現量はSSc患者で高い傾向にあった。単球系細胞株であるTHP-1細胞株を用いて、低酸素培養を行なったところ、CDKN1AのmRNA発現は低酸素培養群で上昇したことから、低酸素環境によるストレス応答が細胞老化関連遺伝子の発現上昇に寄与する可能性が示唆された。これらの結果から、我々は単球の低酸素暴露、特に肺高血圧症合併症例でストレス応答及び細胞老化関連遺伝子の発現上昇がみられると仮説を考えて現在、臨床検体採取を進めている。
3: やや遅れている
肺微小血管内皮細胞株の培養・継代維持の方法確立、及び細胞数や培養時間、培地交換のタイミングなど低酸素培養実験系の条件検討に時間を要し、さらに仮説と異なる結果であったために遅れが生じた。単球系細胞株THP-1を用いた実験及びヒト末梢血由来の単球を用いた実験に関しては順調に進んでいる。
現在、健常人及び全身性強皮症患者の末梢血検体の採取を進めており、検体が集まり次第、リアルタイムPCR法での細胞老化関連遺伝子やサイトカインのmRNA発現定量、またウエスタンブロット法を用いたDNA損傷応答に関連する蛋白質の発現量定量を進めていく準備を進めている。全身性強皮症患者の単球で細胞老化関連遺伝子やサイトカインの遺伝子発現が亢進していることが確認できれば、それらの変化をきたす上流分子機序の探索として、全身性強皮症患者の血清の存在下で単球系細胞株THP-1を培養し、細胞老化関連遺伝子やサイトカイン発現の誘導がみられるかを検証する。また低酸素誘導による肺高血圧症マウスモデルの予備実験を進めていく。肺高血圧症モデルマウスの肺に浸潤した単球やマクロファージをセルソーターで単離しRNAシーケンス解析を行うための予備実験を進めていく。
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Frontiers in Immunology
巻: 15 ページ: -
10.3389/fimmu.2024.1320444. eCollection 2024.