研究課題
Mycobacterium avium complex(MAC)は宿主免疫から逃れ、難治性慢性感染を引き起こす。Toll-like receptor (TLR)のアゴニストは、免疫不活化剤として、MAC症の補助的治療効果を示すことが期待されている。本研究では、 新規TLR3アゴニストであるARNAXのMAC症に対する投与効果をマウスモデルで検討する。本年度は、代表的なMAC症の起炎菌であるMycobacterium avium subsp. hominissuis (MAH)の臨床分離株を用いて、MAC感染マウスモデルの作製を行った。0.5-5×10^7 CFUをC57BL/6マウスに腹腔内接種または経気道接種し、肺、脾臓および肝臓における菌量の変化と肉芽腫様病変の形成を感染9週目まで評価した。腹腔内接種では、各臓器より検出される菌量は感染3週から6週で増加し、6週から9週で安定する傾向が認められた。明らかな肉芽種様病変は感染6週以降の肝臓から確認された。菌を貪食したマクロファージの集塊を含む病変は、脾臓では感染3週後、肺では6週以降で顕著であった。経気道接種による感染では、肺全体に亘って強い炎症と菌体が観察され、菌量も感染9週目まで高い値を示した。脾臓および肝臓でも明らかな病変部を認め、肝臓では感染6週以降で肉芽腫様病変が観察された。今後はこれらを指標に、ARNAXの投与効果を検討する。
4: 遅れている
MAC感染マウスモデルの検討にあたり、当初予定していたM. avium ATCC25291株以外にMAHの臨床分離株の検討を追加した。M. avium ATCC25291株はMAHとは異なる病原性を示すため、MAHの臨床分離株の方が本研究の目的に適していると判断した。また、ARNAXの使用に関する手続きに時間を要したため、ARNAXを用いた検討に遅れが出ている。
検討したMAHの感染マウスモデルでARNAXの投与効果を検討する。また、ARNAXがMAC感染マクロファージにもたらす影響をin vtroで解析する。
本年度は予定していたARNAXを用いた検討を行わず予備実験が中心であったため、その分の使用額を次年度に繰り越すことになった。
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