研究課題
①結核菌感染マウスの感染の経時的解析:組織透明化技術を用いて、結核菌に感染したマウスの肺を透明化し、経時的に肺内の感染の進行を三次元的に解析した。感染初日では肺内全体に分布した結核菌が、感染28日目には上肺野に多く結節影を形成してくる様子が捉えられた。また従来の菌数を評価する方法であるCFUと三次元画像解析ソフトImarisによる解析で算出された菌数と菌塊の体積は完全に相関する結果とはいえなかったが、感染14日目から28日目でCFUが増加するとともに、菌塊の体積も増加している点は同じであった。②3種類の抗酸菌による感染の経時的・病例学的解析:結核の原因菌であるMycobacterium tubeuculosis, ワクチン株である弱毒のBCG、非結核性抗酸菌症の主要な原因菌であるMycobacterium aviumの3種類の蛍光蛋白発現遺伝子組み替え抗酸菌をマウスに点鼻吸入で感染させ、感染後1日目、14日目、28日目にマウスの肺を取り出しCUBICによる三次元解析を行った。感染28日目でBCGとM. aviumは結核菌とは異なり大きな菌塊を形成しなかった。結核菌は上肺野に集塊を形成するのに対して、BCGは特定の領域に偏りなく肺全体に分布していた。M. aviumは気管支の周囲に結節を形成する様子が確認できた。BCGとM. aviumにおいては、CFUとImarisで算出された菌数と菌の堆積は概ね相関していた。③既存の抗結核薬とリンパ管新生阻害薬の治療効果の比較:結核菌をマウスに感染後、感染21日目から生食、INH、REF、VEGFR3抗体(リンパ管新生阻害剤)の4つの治療群に分けて、治療効果を比較した。肺を透明化する過程で免疫染色を用い、肺内のリンパ管を三次元的に描出し、解析することに成功した。しかし、感染した結核菌の量が少ないまたは投与方法が不十分であったためか、①、②の実験時よりも感染巣が小さく治療効果を判別できなかった。
2: おおむね順調に進展している
①、②の解析はほぼ終了しているが、③の実験は、マウスへの感染量が少なかったためやり直す必要がある。
マウスに感染させる結核菌の菌量を増量し、4種類の薬剤の治療効果を比較するため、感染後28日目に菌塊を形成させる必要がある。リンパ管の分布については、バイオインフォマティクス分野の先生方と協力し、感染の経過に伴うリンパ管の分布を解析していく。
今年度は臨床業務で多忙で、基礎実験を行う時間が十分確保できなかったため、次年度使用額が生じた。2024年度は秋頃から基礎実験を開始し、実験器具などの経費で使用する予定である。
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