研究実績の概要 |
COVID-19の発症・重症化予防に臨床試験にて良好な有効性を示すワクチンが実用化される一方、その効果の持続性に関する情報や、変異ウイルスへの交差性等の情報を得ることが必要とされている。本研究は、ワクチン誘導性細胞性免疫に対する新規評価システムを確立することを目的とする。 2023年度は、ワクチン接種歴のある健常ドナーの末梢血に存在するSARS-CoV-2スパイク抗原特異的T細胞頻度の測定、およびそれらT細胞からTCR遺伝子のクローニングを行いTCRの抗原ペプチドに対する結合親和性の評価を行った。スパイク蛋白のアミノ酸配列情報をもとにHLA-A24に対する結合性が予測される5種類のペプチド(QYI,TYV,VYST,VYSS,NYN)とHLA-A2に対する結合性が予測される4種類のペプチド(YLQ,RLQ,RLN,KLP)を合成し、それらペプチドを搭載したMHCテトラマーを作製した。ドナー末梢血単核球をMHCテトラマーで染色し、陽性となったT細胞集団をセルソーターで単一細胞に分離し、cDNAの合成を行い単一T細胞レベルでのTCR遺伝子配列の同定を行った。これまでに8人のドナーからHLA-A24拘束性TCR遺伝子を129種類、HLA-A2拘束性TCR遺伝子を26種類取得することができた。続いて、これらのTCR遺伝子を発現させたレポーターT細胞を作製し、抗原ペプチドを段階希釈して負荷した抗原提示細胞と共培養し、レポーター活性を測定することで各TCRと抗原ペプチドの結合力の情報を得ることができた。次に各TCRをiPS細胞から分化誘導して樹立したキラーT細胞に発現させ、抗原ペプチドを負荷した標的細胞を殺傷することが確認できた。
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