研究課題/領域番号 |
23K15400
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
桐谷 光夫 帝京大学, 医療技術学部, 研究員 (10971335)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 甲状腺 / SLC26A7 / Pendrin / SLC26A4 / ペンドレッド症候群 / ヨード輸送体 |
研究実績の概要 |
甲状腺ホルモンの生合成は、一層の濾胞上皮細胞で取り囲まれた濾胞内コロイドにおいてヨードが有機化される必要があることから、濾胞内へのヨード輸送はホルモン合成に重要な過程の一つである。基底側にあるヨード輸送体SLC5A5 (sodium iodide symporter: NIS)によって濾胞細胞内へ輸送されたヨードは、内腔側膜に発現するSLC26A4 (pendrin)によって濾胞内に運ばれると考えられてきたが、2018年に先天性甲状腺機能低下症の原因遺伝子としてSLC26A7が同定され、これがpendrinと同じ内腔側に発現する新たなヨード輸送体であることが明らかとなった。我々は甲状腺濾胞上皮細胞内腔側に局在するヨード輸送体であるSLC26A4 (pendrin)とSLC26A7の両者の遺伝子発現調節機構について明らかにしてきた。しかし、同じ内腔側面に類似するヨード輸送体が存在する生理学的意義や、両者の輸送体の相互発現調節機構などについては不明のままである。 本年度は、pendrin, SLC26A7の組織内分布について検討を行った。まず、pendrin, SLC26A7に対するポリクローナル抗体と、ラット甲状腺組織切片を作製し、免疫蛍光染色法によって組織中の両ヨード輸送体の局在や発現について共焦点レーザー走査型顕微鏡を用いて解析した。良質な抗体の作製や染色条件の検討に時間を要したが、2つの輸送体の染色方法を確立することに成功し、現在連続切片を用いた濾胞ごとにおけるヨード輸送体の発現分布について解析を進めている。また、ブタ甲状腺組織からの初代培養方法に関する検討を並行して行い、生存率が高く、TSHやサイログロブリンに対する反応の再現性が高い培養方法の確立に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は本年度中にラット甲状腺組織切片を用いたpendrinおよびSLC26A7の発現分布解析は終了している予定であったが、ポリクローナル抗体作製の再検や染色条件などの検討に時間を要したため、現在も解析を進めているところである。その間、最終年度に行う予定であったブタ甲状腺組織からの初代培養細胞の作製について先行して検討を行い、生存率の高い初代培養方法を確立することに成功し、最終年度の実験計画を大幅に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に変更はなく、次年度はラット甲状腺FRTL-5細胞を用いてCRISPR-Cas9によるゲノム編集法によってSLC26A7およびpendrinをそれぞれ欠損させたFRTL-5細胞を作製する。それぞれの輸送体欠損細胞に対して一方の輸送体の遺伝子発現、およびタンパク質の発現をreal-time PCRとWestern blottingによって評価し、いずれかの輸送体が欠損することによって発現量を補うような働きを持つのか野生型と比較解析を行う。 代償性作用が認められた場合、luciferase reporter gene assayによって転写活性が変動しているか確認する。変動の見られたプロモーター領域に関して、転写因子の予測結合サイトのin silico解析を行い、転写因子の候補を絞り、ゲルシフトアッセイやフットプリント法によって実際の転写因子を同定する。遺伝子やタンパク質発現の代償性作用が認められない場合、 細胞内局在を調節することで輸送体機能を補う可能性が考えられる。したがって、免疫染色によって各輸送体欠損細胞に対する一方の輸送体の細胞膜局在を共焦点レーザー走査型顕微鏡によって観察し評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画通りに支出しているが、他の研究費でディスポーサブル消耗品を購入した分、次年度使用分の研究費が発生した。 翌年度分の旅費・人件費・物品費等に充当し、使用する予定である。
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