研究課題/領域番号 |
23K15409
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
村田 幸一郎 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50967825)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | O-GlcNAc修飾 / 肝細胞 / グリコーゲン蓄積 / Phkg2遺伝子 |
研究実績の概要 |
【背景】O-GlcNAc修飾は翻訳後修飾の一つであり、肝臓では脂肪肝、アルコール性肝障害、肝細胞癌などとの関連が報告されているが、代謝調節における詳細な役割は不明である。 【目的】O-GlcNAc修飾の肝細胞における代謝調節や、病態との関連を調べる。 【方法】Cre-LoxPシステムを用いて、タモキシフェン誘導性肝細胞特異的Ogt-KOマウス(Ogt-LKO)を作製し、代謝に関する表現型を調べる。 【結果】Ogt-LKOにおいて、Ogt遺伝子、O-GlcNAc修飾タンパクの減少を確認した。またOgt-LKOではタモキシフェン投与後2週から肝腫大があり、4週から空腹時血糖の低下を認めた。空腹時血糖の低下について、タモキシフェン投与後2週頃からブドウ糖負荷試験、ピルビン酸負荷試験での血糖上昇が抑制され、6週目には糖新生関連遺伝子の発現が減少していたことから、糖新生の低下が示唆された。肝腫大について、Ogt-LKOでは肝細胞の風船様腫大、炎症、線維化を認め、空腹時の肝臓内グリコーゲン量が増加していた。グリコーゲン代謝に関連する遺伝子をRT-qPCRで評価したところ、タモキシフェン投与後早期(2週頃)から糖原病Ⅸc型の原因遺伝子であるphosphorylase kinase γsubunit (Phkg2) の著明な発現低下を認めた。またウエスタンブロットでPHKG2のタンパク発現も低下していた。 【考察】肝細胞におけるO-GlcNAc修飾欠損は、Phkg2の発現低下を介してグリコーゲンの分解を抑制する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タモキシフェン誘導性肝細胞特異的Ogt-KOマウス(Ogt-LKO)の表現型を検討できた。 また、その表現型をもたらした原因として、Phkg2の発現低下の可能性を考慮している。
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今後の研究の推進方策 |
タモキシフェン誘導性肝細胞特異的Ogt-KOマウス(Ogt-LKO)では肝細胞の風船様腫大、炎症、線維化を認め、空腹時の肝臓内グリコーゲン量が増加していた。グリコーゲン代謝に関連する遺伝子をRT-qPCRで評価したところ、タモキシフェン投与後早期から糖原病Ⅸc型の原因遺伝子であるphosphorylase kinase γsubunit (Phkg2) の著明な発現低下を認めた。またウエスタンブロットでPHKG2のタンパク発現も低下していた。 肝細胞におけるO-GlcNAc修飾の低下は、Phkg2遺伝子の発現低下を介して、phosphorylase kinase (PhK)によるglycogen phosphorylase (PYG)活性化を減少させ、グリコーゲンの分解を抑制する可能性がある。今後、O-GlcNAc修飾がPhkg2遺伝子発現を調節する機序、Phkg2の低下が代謝に与える影響などについて検討していく。
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