研究課題
禁煙は心血管病、呼吸器疾患、癌のリスクを軽減する。一方、禁煙後の体重増加は、心血管病発症リスク軽減効果を喪失させ、重要な臨床医学上の課題である。申請者のグループでは、高脂肪食給餌下でニコチンの持続投与/離脱を行うことで、禁煙後の体重増加を模倣するモデルマウスを作製した。その解析からニコチン離脱後の体重増加は摂餌量に依存し、その背景に視床下部の関与があることを示唆した(Takeda et al BBRC 2022)。近年、肥満モデル動物や肥満症患者における視床下部での局所炎症が体重増加、肥満発症と関係するとされている。しかしながら、禁煙後の体重増加において視床下部炎症が関与しているか、未解明である。まず、エネルギー代謝との関与がある、Cannabinoid receptor 1(CB1R)のマウス脳内における発現変化と、ニコチン投与の関係を検討した。通常食給餌では認めなかったが、高脂肪食給餌の際において、視床下部の各部位におけるCB1Rの発現が、ニコチン投与により、増加した。食事誘導性肥満では、ニコチンはCB1R発現を増加させ、ニコチンの体重減少作用を減弱させている可能性が示唆された。次に、ニコチン離脱後体重増加モデルマウスの解析を行った。ニコチン継続時と比べ、離脱時での血中レプチン濃度の低下傾向を観察した。また、ニコチン継続マウスと離脱マウスに、レプチンを投与したところ、ニコチン離脱時においてのみ、体重減少効果が認められた。ニコチン離脱後の体重増加においてレプチンの関与が示唆された。レプチンは視床下部に作用して摂食抑制効果を発揮することから、本結果は、ニコチン離脱後体重増加における視床下部の関与を支持するものであった。また、ヒトにおいて、視床下部グリオーシスの非侵襲的な評価が可能とされる、頭部MRIでのMBHにおけるT2 relaxation timeの測定体制を確立した。
3: やや遅れている
マウス視床下部における炎症性サイトカインのq-PCR法の結果を、安定して得る条件設定に、多くの時間を要した。
①ニコチン離脱後体重増加モデルマウスの視床下部において、IL-1β、IL-6、GFAP、Iba1といった炎症性サイトカインの遺伝子発現をq-PCR法により解析する。②ヒトの頭部MRIにおけるMBHのT2 relaxation timeを測定することで、ヒトにおける視床下部炎症と、体重変化や、代謝パラメーター、喫煙状況との関連を検討する。
ニコチン離脱後体重増加モデルマウスの視床下部炎症を測定する条件設定に時間を要した。そのため、次年度には、条件設定でき次第、上記モデルマウスの解析をすすめることを予定している。また、ヒトの頭部MRIにおけるMBHのT2 relaxation timeの測定と解析をすすめることも予定している。
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 694 ページ: 149413~149413
10.1016/j.bbrc.2023.149413