研究課題/領域番号 |
23K15419
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
田口 朋 北里大学, 医学部, 助教 (70907138)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / β細胞 / 質量分析 / ペプチド / ペプチドーム |
研究実績の概要 |
1型糖尿病は膵β細胞破壊による絶対的なインスリン分泌不全に起因する持続的な高血糖が様々な合併症を引き起こす代謝疾患である。1型糖尿病におけるβ細胞数の減少スピードは症例によって大きく異なることが知られているが、β細胞破壊の経時的変化を非侵襲的、かつ正確に定量化する方法はない。ヒト血漿には全身の各組織に由来するペプチドが数多く含まれていることが知られており、非侵襲的に病態を把握するのに有用である。1型糖尿病患者の血漿とβ細胞破壊モデルマウスの血漿を用いてペプチドーム解析を行うことにより、β細胞破壊を間接的に定量化するための新規ペプチドを同定し、これを定量化するためのアッセイ系を構築することを目的とした。 急性発症発症β細胞破壊モデルマウスを作成するために、β細胞特異的 (mouse Ins1 promoter支配下)にジフテリア毒素受容体(DTR,ヒトHB-EGF)を発現する“mIns1-CreER; ROSA26-DTR(βDTR)マウス”を作製した。Genotypingの結果、CreER遺伝子およびDTR遺伝子を有することを確認できたが、タモキシフェンとジフテリアトキシンを投与しても、高血糖には至らず、免疫染色でもβ細胞破壊の所見は認めなかった。 マウス血漿中に存在する微量の膵β細胞由来ペプチドを検出するための予備実験として、マウス膵島を単離後、膵島に含まれるタンパク質のペプチドーム解析を行った。ペプチド発現プロファイルを以前我々が行ったmRNA発現プロファイルの結果と比較したところ、RNA sequencingで同定された発現量の多い遺伝子に相当するペプチドが、質量分析による測定でも同定されることを確認した。 1型糖尿病患者血漿のペプチドライブラリ作成に向けて、北里大学病院に通院中の1型糖尿病患者血漿22名分を収集した。今後これらを用いたペプチドーム解析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの検討により、膵島におけるmRNA発現プロファイルとペプチド発現プロファイルの類似性および相違性が確認できた。今後は単離膵島より(酵素消化処理を行わずに)ネイティブペプチドを抽出し、質量分析を行うとともに、血漿中のペプチドーム解析を並行して進める。 膵β細胞特異的にジフテリア毒素受容体を発現する“mIns1-CreER; ROSA26-DTR(βDTR)マウス”ではタモキシフェン、ジフテリアトキシンの投与でβ細胞破壊を確認できなかったため、アロキサンを用いてβ細胞破壊方法を誘導する実験を並行して進める。今後は腎障害等の副作用を回避しながら効率的に回避する効率的な膵β細胞破壊を誘導する条件を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
【β細胞破壊モデルマウス作成】 アロキサンを野生型マウスに投与し、膵β細胞破壊を誘導する。アロキサンによる腎障害等の副作用を回避しながら効率的にβ細胞破壊を誘導する条件を検討する。 【膵島、血漿のペプチドーム解析】 野生型マウスの膵島と血漿よりネイティブペプチドを抽出し、質量分析を行う。 【1型糖尿病患者のペプチドライブラリの構築のための検体収集】 引き続き、北里大学病院に通院中の発症早期の1型糖尿病患者より採血を行い、データベースを整備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペプチドーム解析に関して、当初の予定より少ない予算で研究を行うことができた。2024年度はペプチドーム解析等に多くの費用を必要とするため、「次年度使用額」に相当する金額を使用させていただきたい。
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