研究課題/領域番号 |
23K15432
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮内 玄徳 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (00961707)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腹腔マクロファージ / 早産児腹膜炎 |
研究実績の概要 |
本研究では、早産児腹膜炎が腹腔内の細菌感染から全身の敗血症や多臓器不全を引き起こし、致死率が高い疾患であることに対処するため、早産児腹膜炎モデルマウスを用いて免疫応答の変化を解明しようと試みている。このモデルマウスでは、腹膜炎発症後の死亡が24時間以内の急性期に多く見られ、早産児特有の自然免疫系の未熟さが関与していると考えられる。特に、成獣モデルでは見られるIL-12、IFN-γの有意な上昇が早産児モデルでは確認されなかった。これにより、腹腔マクロファージの特性と免疫応答に注目し、早産児腹膜炎における致死率の高さに対する新たな免疫賦活療法の開発につながる知見を得ることを目指している。さらに、実臨床に基づいた早産児腹膜炎モデルマウスに対する異なる温度の生理食塩水を用いた腹腔内洗浄効果の検証を行った。その結果、温度が高い生理食塩水を用いるほど、手術後の生存率が低下し、手術後の低体温およびMCP-1の抑制が生存率の低下に関連していることが示された。これらの結果は、早産児腹膜炎の治療における腹腔内洗浄の効果に新たな示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗状況は、計画よりもやや遅れている。この遅延の主な理由は、予期せぬ実験結果と実臨床に基づいたモデルの設定変更にある。具体的には、早産児腹膜炎モデルマウスにおける腹腔内洗浄効果の検証を行う過程で、異なる温度の生理食塩水が生存率に及ぼす影響が予想外であったため、実験計画の再評価と調整が必要となった。これにより、研究の進行が遅れる結果となった。さらに、研究に使用する早産児モデルマウスの調達と維持にも時間がかかり、これが全体のスケジュールに影響を与えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、早産児モデルと成獣モデルの間で腹腔マクロファージの解析を比較し、免疫応答の違いを詳細に調査する。現在採取している検体の詳細な解析を進め、新たなデータに基づく研究の深化を図る。また、腹腔マクロファージが果たす役割を明らかにし、それに基づいた新しい治療法の開発に着手する。この治療法の開発には、免疫賦活療法の可能性も含め、早産児腹膜炎の救命率を改善するための複数のアプローチを試みる計画である。これらの研究活動を通じて、早産児腹膜炎に対する新たな治療戦略を提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、フローサイトメトリー試薬及び分子生物学的試薬の購入が計画されていたが、一部の納品が次年度に延期されたためである。この購入の延期は、試薬の供給遅延によるものもあり、研究計画自体に大幅な変更はない。次年度には、これらの試薬の購入を予定通り行い、本年度に引き続き予定された実験を遂行する。そのため、次年度の消耗品費としてこれらの予算を計上し、本年度の余剰予算は次年度の試薬購入に充てられる予定である。
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