研究課題/領域番号 |
23K15435
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡留 一雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (80867200)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Fusobacterium nucleatum / Esophageal cancer / CAFs(癌関連繊維芽細胞) / 腸内細菌 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
大腸癌におけるFusobacteriumとサブタイプ(CMS1-CMS4)との関連について、Fusobacteriumが予後へ及ぼす影響はCAFsが多いCMS4のサブタイプに限って認められたとの報告がある(Salvucci et al. Gut, 2022))。以上より、FusobacteriumがCAFsと共同で腫瘍進展に関与している可能性が示唆され、食道癌においても検証する事にした。 Public databaseを用いてFusobacteriumと予後の関連を、CAFsの発現量別に解析した。TCGA及びTCMAのデータを用い、食道癌患者183人における腸内細菌種のデータと予後、CAFs関連mRNA発現(FAP、CXCL12、PDGFRA、VIM)を統合解析した。各CAFs関連遺伝子において高発現グループと低発現グループに分類し、各グループでFusobacteriumと予後の関連を解析した。その結果、FAP、CXCL12、PDGFRA、VIMの高発現グループではFusobacteriumは予後不良と有意な相関を認めた。一方、低発現グループでは予後との関連は認めなかった。以上より食道癌にFusobacteriumはCAFsと共存することで予後不良に寄与する可能性が示唆された。 次に当科における食道癌臨床検体(n=297)を対象にFusobacterium nucleatumと予後の関係が腫瘍免疫によって変化するかどうかを解析した。癌組織内のF. nucleatumはqPCRで評価し、腫瘍免疫マーカー(CD8, FOXP3)は免疫組織学的染色で評価した。FOXP3については低発現症例でF. nucleatum陽性症例はOS, CSS共に予後不良であったが、CD8については高発現症例と低発現症例のいずれにおいても、F. nucleatumが予後に与える影響に違いは認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では食道癌においてF. nucleatumとCAFsとの関連や腫瘍免疫との関連について統合解析を行う予定である。食道癌でもFusobacteriumとCAFsが共同で腫瘍の進展へ寄与している可能性がPublic databaseを用いた解析で示唆された。次に臨床検体を用いた解析を進めているところであるが、現時点ではFusobacteriumが腫瘍免疫と関連し予後へ関与している結果は得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
TCGA及びTCMAのPublic databaseを用いて、食道癌におけるFusobacteriumとCAFsとの関係について解析したところ、FAPやCXCL12、PDGFRA、VIM等のCAFs関連の遺伝子の発現量によってFusobacteriumが予後へ与える影響が異なることから、食道癌でもFusobacteriumがCAFsと関連して予後へ影響を与えている可能性が示唆された。 食道癌の臨床検体を対象に、F. nucleatumと他の腫瘍免疫関連マーカー(CD163, CD204, PD-L1, PD-L2等)やCAFs関連マーカーについて解析を行う方針である。 CAFs関連マーカーとしてαSMAの評価法は確立しており、今後症例数を増やしていく予定である。また、CAFs関連マーカーについては、他のマーカーでの評価も検討している。Public databaseや臨床検体を用いた解析から得られた結果を基に、どのマーカーに注目して、引き続き研究を続けるべきであるのかを検討しているところである。臨床検体にて有意な結果が得られた場合は、FusobacteriumやCAFsを用いたin vitroやin vivoの実験方法も行う方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗に応じ試薬・実験消耗品等購入予定
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