研究実績の概要 |
先天性気管狭窄症は、気管膜様部が欠如した完全気管輪により換気障害をきたす致死的疾患で、その遺伝学的原因は未解明である。われわれは、新たに1家系の検体を集積し、先天性気管狭窄症5家系に対して本人および両親の全エクソーム解析を施行した。その結果、うち2例にde novoのTBX5およびPTPN11遺伝子変異を同定した。 TBX5は、先天性心疾患と母指形成不全を特徴とするHolt-Oram症候群の原因遺伝子である。われわれは、先天性気管狭窄症に心房中隔欠損症、大動脈一尖弁などの先天性心疾患を合併した症例において、Holt-Oram症候群の原因として既報のTBX5のde novoのミスセンス変異を同定した。臨床所見およびXpの再評価の結果、母指の近位位置異常などの母指形成不全は認められなかった。TBX5は、TBX4とともに気管形成に関与しており、ノックアウトマウスでは気管軟骨が正常に形成されないことが報告されており、今回われわれが同定したTBX5遺伝子変異は、先天性気管狭窄症の発症にも関与している可能性が強く示唆された。そこで、TBX5 Wild type, 本変異, 過去に機能低下が報告されているミスセンス変異に対して、TBX5のレポーターであるNPPAを利用したルシフェラーゼアッセイを施行した。その結果、今回同定されたTBX5ミスセンス変異によって活性が低下することを明らかにした。さらに、in silico構造解析を施行し、本ミスセンス変異により、TBX5タンパク質の安定性が低下することが予測された。 残る3家系については、全エクソーム解析では明らかな候補原因遺伝子は同定されなかった。
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