研究課題/領域番号 |
23K15453
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
東 美樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (40814504)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞シート / 同種(他家)移植 / 筋芽細胞 |
研究実績の概要 |
近年、自己(自家)骨格筋由来細胞シートによる再生医療の実用化が進んでおり、研究代表者の所属機関においても、今年度をもって自己(自家)骨格筋由来細胞シートを用いた表在性非乳頭部十二指腸腫瘍を対象とする医師主導治験を完遂した。しかし自己(自家)細胞の使用には、検体採取の際の侵襲性や細胞の分離・増殖のために治療の待機期間を要するという問題点があり、骨格筋由来細胞シートによる治療の汎用化には、細胞ソースの「同種(他家)」移行への検討が今後の課題になると考えられる。本研究は、同種(他家)骨格筋由来細胞を利用する新規再生医療開発への貢献を目的とし、自己(自家)と同種(他家)の骨格筋由来細胞シートの効果安全性を比較検討するため、今年度は主に以下の研究を行った。
2系統のラット(WistarおよびBrown Norway)の骨格筋由来筋芽細胞から調製した細胞シートを、Wistarラット酢酸胃潰瘍モデルの胃潰瘍部漿膜側に貼付し、自己(自家)移植群と同種(他家)移植群を作製した。コントロール群は胃潰瘍作製後に細胞シート移植を行わないもの(無治療群)とした。術後1, 3, 7日に移植部組織、血液および腹腔洗浄液を採取した。移植部組織からホルマリン固定パラフィン標本作製の作製とtotal RNA抽出を行った。肉眼的観察およびHE染色標本により移植部周囲のシート残存、炎症細胞集積、線維化を観察した。HE染標本を用いて胃潰瘍底長を測定し筋芽細胞シートによる創傷治癒効果を比較した。また、RNAを用いたRT-qPCRにより創傷治癒に関わる遺伝子の発現量の変化を調べた。自己(自家)移植群は予定症例数を完了することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
同種(他家)移植群に用いる骨格筋由来細胞の調製および大量培養に時間を要したため移植の実施および検体の解析の進捗が予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き同種(他家)移植実験をすすめ、移植部組織の病理標本およびRNA、血清、腹部洗浄液を得る。病理標本を作製して肉眼的観察および病理標本のHE染色像により移植部周囲のシート残存、炎症細胞集積、線維化を定性的に観察する。病理標本の免疫染色を行い、創傷治癒に関わるタンパク質の発現量を調べる。移植部組織から得られたRNAを用いてRT-qPCRにより創傷治癒に関わる遺伝子の発現量を調べる。血清と腹部洗浄液から炎症や拒絶反応に関与するサイトカインの濃度を測定する。 得られたデータをコントロール群と自己(自家)移植群、同種(他家)移植群間で比較検討し、自己(自家)移植と同種(他家)移植における効果安全性の差異の有無を検証する。 また、現在使用している2系統のラットとはハプロタイプが異なるラットで同種(他家)移植実験を追加して実施し、同種(他家)移植における効果安全性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他施設からの先行研究の結果が報告されたため、今年度実施を予定していたヒト骨格筋由来筋芽細胞やヒト間葉系幹細胞などの表面抗原や免疫応答に関する実験を保留し、動物実験を先に進めたため、in vitro実験に関わる消耗品の購入額が予定より少なくなった。 次年度もin vivo実験を主に研究をすすめ、実験動物の購入や手術、細胞培養、解析のための試薬や器材および情報収集のための支出を予定している。
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