研究課題/領域番号 |
23K15465
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研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
渡辺 栄一郎 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (40623327)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 胎便 / プロテオーム解析 / 早産児 / 細胞外マトリックス / 粘液 / 在胎週数予測モデル / 羊水 |
研究実績の概要 |
これまで、胎便中に存在するタンパク質を大規模に解析した報告はなく、胎便中のタンパク質組成を分析することが、新生児期の消化管の病態生理の理解や疾患の病態解明に役立つ可能性があると考え、本研究を遂行した。 新生児259例(超早産児(<28週):20例)の初回胎便(平均採取時期:出生後11.9±9.47 時間)をプロテオーム解析で分析し5,370種類のヒト由来タンパク質が同定できた。その中から、100検体以上で同定できた3,433種類のタンパク質に焦点をあて、欠損値処理を加え詳細に分析した。その結果、胎便中のヒト由来タンパク質は、全身の臓器を由来とし様々な機能を有することが判明した。胎便中のヒト由来タンパク質の組成は、男女間で大きく異なり、女児では液性免疫に関連するタンパク質が多く含まれていることがわかった。また、在胎週数間での詳細な分析により、胎便中のヒト由来タンパク質は7個のクラスターに分類可能で、短い週数で出生した児(preterm infant)では、Laminin、IntegrinそしてCollagenなどの細胞外マトリックス関連タンパク質が多く存在することが判明した。加えて、粘液成分の検討では、Mucin-5BCとMucin-16が多くMucin-1とMucin-2が少ないことが判明した。また、胎便のヒト由来タンパク質組成は、消化管疾患、心疾患、染色体異常、先天感染を有する新生児、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症の母体から出生した新生児において異なることが判明した。さらに、LASSO (Least Absolute Shrinkage and Selection Operator) 回帰を用いることで、胎便中の57種類のヒト由来タンパク質から在胎週数予測モデルを作成することに成功した。本研究により構築できた在胎週数予測モデルを、別コホートである新生児79例において検証した結果、高い再現性が得られることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際誌であるNatue Communicationsに論文を投稿でき、3か月間のリバイス期間を経て再投稿を終えた状況にある(2024年4月11日)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究おいて胎便タンパク質組成が明らかとなった。今後は、壊死性腸炎、胎便イレウス、乳児食物蛋白誘発胃腸症(Non-IgE-mediated gastrointestinal food allergy)、胆道閉鎖症などの便を蓄積して、それぞれの疾患の病態解明や早期診断バイオマーカーの探索に繋げていく。 また、本研究において、羊水と胎便のタンパク質組成の比較検討が重要であることが判明した。羊水と胎便の関係を明らかにすることで、絨毛膜羊膜炎(CAM)や臍帯炎などの胎児期において致死性が高い疾患の早期診断バイオマーカー探索にも繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
胎便研究に関する論文に必要となる情報収集と実験は完了しており、現時点での本研究の遂行と論文作成に関する追加費用が発生しなかった。
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