研究課題
2010年4月から2022年3月に当科で治癒切除が行われた糖尿病を合併した大腸癌313例について、手術時の糖尿病治療薬の服薬状況、臨床病理学的因子及び術後全生存率(OS)と術後無病生存率(DFS)を調査した。糖尿病合併症例のうちメトホルミン内服症例は大腸癌が73名(23.3%)、胃癌が63名(29.9%)、膵癌が12名(23.5%)だった。また、メトホルミン内服群は非内服群と比較してOSに差は認められなかった(p=0.18)が、DFSは有意に良好であった(p<0.01)。糖尿病合併大腸癌症例の内メトホルミン内服症例40例とpropensity scoreで一致させた非内服群の切除標本から病理切片を作成し、TANをCD66b、NETsをシトルリン化ヒストン3(CitH3)、TILをCD3とCD8に対するモノクロナール抗体を用いた多重免疫染色法にて同定し、TAN、Tumor-associated NETs、TILの密度を定量し比較検討した。メトホルミン内服群におけるCD66b(+)細胞の密度は非内服群よりも有意に低かった(p<0.001)。また、CD66b(+)CitH3(+)NETの密度もメトホルミン内服群は非内服群と比較して有意に低かった( p<0.001)。また、メトホルミン内服群におけるCD3(+) TIL、CD8(+) TILの密度は共に有意に増加していた (p<0.01)。 さらに、80 人の患者全員において、TAN またはTumor-associated NETs と CD8 (+)TIL の間に負の相関関係が認められました (r=-0.26、p<0.05)。In vitroの検討では、メトホルミンはLPSで刺激したヒト末梢血好中球からのNETsの産生を濃度依存性に抑制すること、NETsの存在が活性化リンパ球の走化性を抑制することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
メトホルミンの服用が大腸がん患者の予後と関連していること、大腸癌組織中の好中球やNETと関連していることが確認された。
免疫染色の追加。メトホルミン以外の抗糖尿病治療薬とNETとの関連性の追求。
おおむね順調に研究が進んでおり、購入予定であった免疫染色試薬の費用が抑えられた。繰越し分については、R6年度研究成果発表のための旅費や、免疫染色等実験補助者の人件費・謝金などに使用予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
British Journal of Cancer Reports
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10.1038/s44276-023-00022-w