研究課題/領域番号 |
23K15514
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小西 孝宜 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80865882)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 大腸癌肝転移 / Growth pattern |
研究実績の概要 |
大腸癌肝転移に対するHistological growth patterns (HGPs)に基づいた新たな個別化治療を構築するために、まず当科で大腸癌肝転移に対して初回肝切除を施行した症例を用いて、HGPsと臨床病理学的因子や予後との関連を解析した。Desmoplastic growth pattern, Replacement growth pattern (rHGP), Pushing growth patternを比較すると肝転移個数や肝転移巣の腫瘍径や肝転移のタイミングなど肝転移に関する背景因子に有意差を認めなかった。一方で、rHGPを伴う肝転移例ではdisease-free survivalが有意に不良で特に肝外再発を高頻度に認めた。また、肝切除術後のoverall survivalも有意に短かった。さらに多変量解析によりHGPsが肝切除術後の予後に関わる独立した因子であることが示された。rHGPを伴う肝転移例では特に再発巣に対して再切除をしえてもその予後は不良であった。以上の結果より、HGPsは肝切除後の予後予測因子となりえ、肝切除後の再発例に対する治療成績に影響を及ぼす因子であり、HGPsが大腸癌肝転移に対する治療のdecision-making factorとして有用となる可能性が示唆された。さらにHGPsごとの特異的な肝転移巣の生物学的特徴を明らかとするために、肝転移巣のH&E染色で病理学的特徴を検討した。rHGP例の特徴として腫瘍辺縁におけるtumor buddingやpoorly differentiated clusterを高度に認めることが示された。これらの結果は、肝転移巣で獲得された腫瘍細胞のEMTやcell mortilityが肝外転移を惹起させ、患者の予後を悪化させている可能性を示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Histological growth patterns (HGPs)が大腸癌肝転移巣の進展に影響を与えるという仮説のもと、臨床検体を用いてそれぞれのHGPsの再発形式と予後の特徴を明らかとした。臨床的に予後予測や再発に対する治療方針決定にHGPsが有用となる可能性を示唆する結果が得られており、概ね順調に進んでいる。次に予後不良なReplacement growth patternの肝転移に着目し、その特徴的な所見やメカニズムの解析は進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
予後不良なReplacement growth pattern (rHGP)の肝転移巣の特徴的な所見やメカニズムの検討を継続する。大腸癌肝転移例の臨床切除検体を用いてHGPsごとのRNA発現またはタンパク発現を網羅的解析にて比較検討し、rHGPを伴う肝転移巣の腫瘍進展に関わる分子や遺伝子変異の同定を行う予定である。またGene set enrichment analysesで発現上昇した遺伝子群の機能を解析し、rHGPの肝転移で惹起されている現象を明らかとする。rHGPの特異的な腫瘍進展に関わる分子が同定されれば、その機能解析(細胞増殖能, 浸潤能, 遊走能, EMT, cancer stemnessなど)をin vitroにて行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
概ねの予定額は使用しており、僅かな端数として次年度使用額が生じた。次年度使用額は実験の経費に使用する予定である。
|