研究課題/領域番号 |
23K15526
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
武居 晋 佐賀大学, 医学部, 助教 (30883425)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 膵癌 / 転移 / 転移臓器指向性 / 膵癌関連線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
微小転移巣には腫瘍細胞のみならず多くの免疫細胞や癌関連線維芽細胞を主体とする間質細胞が観察される。今年度は腫瘍細胞をマウスに脾注することで微小肝転移モデルを作成し、実験的な微小肝転移巣の観察を行った。腫瘍細胞にGFPを導入することで、切除肝の免疫染色で微小肝転移巣であっても単細胞レベルでの微小肝転移巣の同定が可能であった。同定した微小転移巣の各種免疫染色を行うと、脾注後1-2日目の早期に好中球をはじめとした免疫細胞が転移巣に誘導されることが観察され、その後にα-SMA陽性の線維芽細胞が誘導される現象が観察された。 一方、同腫瘍細胞を静注する肺転移モデルでの検討を行った。投与直後の観察では肺に多数のGFP陽性の細胞が観察されたが、転移巣に進展する病巣はわずかであった、その過程を各段階で顕微鏡的検索を行うと、α-SMA陽性の線維芽細胞の誘導が肝転移巣と比較すると有意に少なかった。 このことから肝転移巣、肺転移巣の転移形成機序が異なり、その差異には線維芽細胞の誘導が関わっている可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究ではGFPを導入した腫瘍細胞を用いたマウスでの微小転移モデルを用いることで肝転移、肺転移の転移微小環境の観察が極初期の段階から可能であった。各段階での微小転移巣を観察することで免疫細胞や線維芽細胞が誘導される様子が観察できた。 また、膵癌術後再発例では初発再発臓器の違いによりその後の予後が異なることが自験例も含めて報告されている。本研究では肝転移、肺転移の極初期の段階において線維芽細胞の誘導のされ方が異なることが観察され、線維芽細胞の誘導が転移形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。この仮説をもとに今後の研究を進めていく予定であり、概ね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はさらに転移巣の免疫細胞にも着目し、線維芽細胞の誘導と免疫細胞のクロストークの可能性も含めて研究を進める。具体的には線維芽細胞の誘導に促進的に働く免疫学的機序を検討する。また、その機序を明らかにすることで転移抑制に有効な治療手段の開発を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に転移微小環境のシングルセル解析等を予定しており、、次年度の使用予定金額が増加したため。
|