研究実績の概要 |
2016年から保存してある肺移植後患者の血液検体よりエクソソーム単離および、エクソソームに含まれるマイクロRNA(exo-miRNA)を行い、手技の安定化を確保することが出来た。 次に、慢性移植肺機能不全(CLAD)診断時およびその1年前の血液検体が両方そろっている9名のうち、各背景因子がマッチングしたCLAD患者3名および非CLAD患者3名を対象として、探索的研究を行った。exo-miRNAよりマイクロアレイを実施した結果、7種類のmiRNA(miR-17-5p, miR-150-5p, let-7b-5p, let-7c-5p, miR-122-5p, miR-126-3p, miR-185-3p)が標的exo-miRNAとして選定された。 その後、検証的研究として、これらmiRNAの発現量をqPCR法を用いて、CLAD患者および非CLAD患者間で比較した結果、miR-17-5pおよびmiR-150-5pの発現量がCLAD患者で有意に上昇していた(miR-17-5p, P<0.0001; miR-150-5p, P=0.0005)。CLAD診断における有用性に関して、ROC解析を用いて検討したが、miR-17-5p(AUC 0.92)、miR-150-5p(AUC 0.86)といずれのマーカーもCLAD診断において良好な検出力であった。CLAD発症1年前の血液検体に関しても同様の解析を行ったが、1年前に関しては両郡間において有意差を認めなかった。miR-17-5pおよびmiR-150-5pは、どちらも線維化に関係するmiRNAとして、肝臓および腎臓、心臓で報告されているmiRNAである。CLADも移植肺に線維化を来すことで発症すると報告されており、これらmiRNAの発現量がCLADの新規バイオマーカーとなり得る可能性があると思われた。
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