研究課題/領域番号 |
23K15564
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
住谷 隆輔 順天堂大学, 医学部, 助教 (10847908)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 気管支 / 肺胞 / 幹細胞 |
研究実績の概要 |
気道は気管(支)と肺の異なる組織より構成され、その組織維持・傷害再生を担う細胞も基底細胞、クララ細胞、II型肺胞上皮細胞と多種多様である。申請者はこれらの3種類の細胞に共通して発現する分子としてグルタチオングルタチオンS-転移酵素オメガクラス2(GSTO2)を見出している。本研究の目的は、GSTO2陽性細胞の幹細胞機能維持おける、GSTO2の重要性を明らかにすることである。初年度は、ヒト肺腺癌細胞株A549およびPC-9にGSTO2を強制発現させたトランスフェクタントを作製し、幹細胞機能維持機能に及ぼす影響を評価した結果、上皮間葉転換転換(Epithelial Mesenchymal Transition: EMT)に関わる分子vimentinの発現を抑制することを見出した。近年、vimentinが免疫チェックポイント阻害薬の標的の一つであるPD-L1の発現を制御するとの報告があるが、GSTO2強制発現細胞においてPD-L1の発現が低下していた。そこで、ヒト肺腺癌切除標本を用いてGSTO2並びにPD-L1発現を免疫組織化学的に検討した結果、GSTO2陽性の肺腺癌組織においてPD-L1発現が認められなかった。さらに臨床因子との比較の結果、GSTO2の発現は重喫煙歴、腺癌における分化度、無再発生存とも関与していることが示された。これらはPD-L1との発現の相関がこれまでに示されている因子である。以上より、肺腺癌におけるGSTO2消失は免疫逃避機構に関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は主にヒト細胞株を用いた検討により、GSTO2の機能解析を行った。初年度の成果として、幹細胞機機能維持に重要な分化抑制機能を示すことが出来た。さらに、分化抑制に関わる分子を介して免疫逃避機構にも関与している可能性を見出した。ヒト組織検体を用いた検証によっても免疫チェックポイント阻害剤標的分子の発現制御に関わっている可能性が示されたため、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者がヒト肺に存在する多様な幹細胞・前駆細胞に共通して発現する分子として着目しているGSTO2は、細胞表面に発現が認められない分子である。そのため、CRISPR/Cas9システムを用いてGSTO2レポーターマウスを作製した。来年度は、本遺伝子組換えマウス肺の酵素処理より細胞のシングル化を行い、セルソーターを用いたGSTO2陽性細胞の分離、得られた細胞の遺伝子発現解析を行う予定である。GSTO2陽性の異なる細胞集団(基底細胞、クララ細胞、II型肺胞上皮細胞)を見分けるための細胞表面マーカーの選定並びに予備検討は既に終了している。
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