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2024 年度 実施状況報告書

脳領域間の情報伝達機構の異常に着目した術後せん妄の発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K15583
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

志田 恭子  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (00381880)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード術後せん妄 / 術後神経認知機能障害 / 前頭前皮質 / 海馬
研究実績の概要

本研究では、術後せん妄(Postoperative Delirium; POD)の発症機序において、前頭前皮質(PFC)と海馬(HPC)といった記憶に重要な脳領域間の情報伝達異常が関与するとの仮説に基づき、自由行動下の神経活動を多面的に計測・解析することを目的としている。2024年度は、以下の技術的整備および予備的実施を中心に研究を進めた。
前年度に作成を試みたPODモデルマウス(短期記憶障害を呈するモデル)は、新しい麻酔器の使用による麻酔条件の変更などの影響で、安定して短期記憶障害を再現できなかった。そこで本年度は、より再現性が高く、既に研究室内で確立されている術後神経認知機能障害(Postoperative Neurocognitive Disorder; NCD)モデルを用いて、前頭前皮質および海馬における神経活動の記録を検討した。
まず、多点電極による脳波測定系を構築し、自由行動下で安定した信号取得が可能となるよう、記録条件の最適化を行った。脳波信号の品質向上とノイズ管理の課題に対応しつつ、今後の大規模収録に向けたプロトコルの整備が進行している。
また、神経細胞集団活動の可視化に向けて、Thy1-GCaMP6マウスの導入準備を完了し、海馬へのGRINレンズ埋め込みの予備実験を開始した。これにより、カルシウムイメージングによる深部神経活動の可視化に必要な手技と体制の整備が順調に進展している。

現在までの達成度
現在までの達成度

3: やや遅れている

理由

前年度に作成を試みたPODモデルマウスにおいて、短期記憶障害を安定して再現することが困難であったため、今年度は再現性の高い術後神経認知機能障害(NCD)モデルに切り替えて研究を実施している。このため、当初予定していたPODモデルでの神経活動解析は一部未実施となっている。一方で、自由行動下での脳波測定系の構築および遺伝子組換えマウス(Thy1-GCaMP6)の導入準備、GRINレンズ埋め込みの予備実験まで進行しており、技術的基盤は整いつつある。

今後の研究の推進方策

今後は、構築した多点電極による脳波測定系を用いて、術後NCDモデルにおける前頭前皮質と海馬の神経活動を定量的に記録・解析する予定である。並行して、Thy1-GCaMP6マウスを用いて、海馬へのGRINレンズ埋め込みを進め、自由行動下でのカルシウムイメージングによる神経細胞集団活動の可視化を実施する。取得されたデータは、脳波との統合解析により、脳領域間の情報伝達異常の時系列的・空間的特徴を抽出する。
さらに、次年度以降は、特定の脳領域の神経活動を人為的に操作可能なDREADD技術などを用いた介入実験を行い、PFCおよびHPCの神経活動変化が認知機能に及ぼす影響を解析する計画である。これにより、脳領域間の因果関係の可視化と、術後せん妄や認知機能障害の神経基盤の明確化を目指す。技術的な準備は順調に整いつつあり、今後は実データの収集と解析を加速していく。

次年度使用額が生じた理由

次年度は、GRINレンズの埋め込みを完了させた上で、自由行動下のThy1-GCaMP6マウスに対してカルシウムイメージングを実施する。また、神経活動を制御するためのウイルスベクター導入や免疫組織化学解析に必要な抗体類の費用も必要となる。

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公開日: 2025-12-26  

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