研究実績の概要 |
以前より全身麻酔薬は長時間暴露により中枢神経に影響を与える可能性が指摘されている。近年になり吸入麻酔薬など現在臨床現場で広く用いられている麻酔薬が、胎生期や幼若期の中枢神経におけるアポトーシス誘導を増加させることが報告され、小児の脳の発達に悪影響を与える可能性があることが警告さている。 そこで全身麻酔薬による幼弱脳における神経細胞障害に関わる未解明な謎を解き明かすた め、本研究では幼若マウスを用いて様々な酸素濃度環境下で全身麻酔薬を投与し、神経細胞の発達や細胞死・アポトーシス実行経路の解析を行った。 本年度はリアルタイムPCRを用いたサイトカインの発現を測定し解析を行った。生後4-5日のICRマウスに(a)50%酸素下で吸入麻酔薬セボフルラン2.5%を4時間吸入させた群、(b)21%酸素下で吸入麻酔薬セボフルラン2.5%を4時間吸入させた群、(c)17%酸素下で吸入麻酔薬セボフルラン2.5%を4時間吸入させた群、(d)21%酸素を4時間吸入させた群を用いて実験を行った。4時間後に大脳を取り出し、リアルタイムPCRを用いてRNAの発現を調べた。神経成長に関わるNlgn1, PSD95, Aif1および炎症性サイトカインのIL-1b, IL-6, Bax, Bad, Bcl-2, TNFaを測定した。炎症誘発性サイトカインのIL-6とアポトーシス促進に関わるBadはセボフルランなしの群に対して、 セボフルランありの群では有意に発現量が増加していた。また有意差はみられなかったが、炎症性誘発性サイトカインのIL-1bおよびTNFaでも同様の傾向が確認された。神経成長に関わるPSD95は(a)50%酸素下でセボフルランを投与した群に対して有意に、(c)17%酸素下でセボフルランを投与した群で発現量の増加がみられた。
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