研究実績の概要 |
脳波のPhase amplitude coupling(PAC)がGABA作動性麻酔薬の麻酔深度と関連があることは知られている。しかし、ケタミンを併用した場合の脳波PACは明らかではない。麻酔中にケタミンを併用すると、従来の麻酔深度モニターでは正確にその麻酔深度を反映しない。そこで、我々はプロポフォールによる全静脈麻酔下にケタミンを併用した場合の脳波PACを調べた。プロポフォール全静脈麻酔下に麻酔を受ける患者10名を対象に、ケタミン(0.5 mg + 0.125 mg/kg/hr)投与前と10分後の脳波PACを比較した。脳波PAC解析として、α波の振幅が最大となるδ波の位相を調べた(Preferred phase, PrP)。また、従来の麻酔深度の指標であるBispectral index(BIS)とSpectral edge frequency (SEF) 95も比較した。ケタミン投与後、BISとSEF95は有意に上昇した(BIS, 47 ± 9 vs 62 ± 10, P < 0.001; SEF95, 15 ± 2 vs 20 ± 3 Hz, P < 0.001)。これは従来の麻酔深度測定法では、麻酔深度が浅くなっていることを示している。一方、ケタミン投与後、平均PrPは2.53 rad から1.21 radに有意に変化した(P = 0.011)。これは脳波PACがtrough-maxパターンからpeak-maxパターンに変化したことを示し、麻酔深度が深くなったことを示唆している。脳波PAC解析はケタミンを併用した場合の麻酔深度評価に有用であるかもしれない。
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