研究課題
本年度は、同一運動課題の皮質活動の“慣れ”によって脳皮質脳波の高周波律動(HGA:High gamma activity, 60-170Hz)が減衰している可能性について詳細な解析を行った。旭川医科大学病院および近畿大学病院てんかん外科手術および覚醒下開頭腫瘍摘出術の対象となった患者に11例について、同一運動課題によるHGA減衰効果について解析を行った。一次運動野・感覚野を関心領域とし、電極139個が対象となった。課題提示後0.4-1.0秒のHGAを測定し、統計学的有意(p<0.05)なHGA上昇を認めた電極は60個だった。これらの各電極から得られるHGAを課題内掌握回数(短い休息を伴う群)と課題回数(長い休息を伴う群)に分けて減衰効果を調べた。課題内掌握回数は3回まで、課題回数自体は2回までは統計学的に有意な減少を認め、以降は緩やかな減衰効果を示した。また、各電極から得られたHGAについて有意な減衰効果を認めた電極についても調べた。課題内掌握回数におけるHGA減衰は15個(25.0%)、課題回数におけるHGA減衰は9個(15%)であり、課題回数(長い休息を伴う群)におけるHGAは減衰効果の影響が少なかった。さらに、これらの電極は手の一次運動野・感覚野に密集する傾向を示した。これらの結果から、同一運動課題によりHGAの減衰が生じる可能性を示した。解剖学的な手の一次運動野・感覚野の電極ではHGAの減衰効果を念頭に置く可能性を示した。上記結果を第56回日本てんかん学会学術集会、第26回日本ヒト脳機能マッピング学会で報告した。また、国際学会であるBCI&NEUROTECHNOLOGY 『SPRING SCHOOL 2023』に招待され教育講演を行った。また、本研究の対象疾患でもある悪性脳腫瘍についてMRIを用いた画像研究を行い、国内、国際学会および原著論文として報告した。
3: やや遅れている
近畿大学病院脳神経外科との国内共同研究およびGuger technologies社との国際共同研究によって、高周波律動における減衰効果の影響を詳細に解析し結果をまとめることができた。単一運動課題によって高周波律動の減衰効果を定量的に検証した初めての研究成果として、国内および国際学会で発表することができた。また、この研究結果を論文投稿に向けて準備中である。一方で、覚醒下開頭腫瘍摘出術の対象となる患者に対して、各課題のHGAマッピング局在診断精度、半覚醒状態での言語領野の局在診断精度について十分に検討行うことができなかっため、今後は症例を蓄積して検討を行う。
覚醒下開頭腫瘍摘出術の対象となる患者に対して、各課題のHGAマッピング局在診断精度、半覚醒状態での言語領野の局在診断精度に対して検討を行う。また、対象患者が予定より少ないことが想定される場合には、近畿大学脳神経外科非常勤講師及び金沢工業大学客員教授の露口尚弘医師と協力して症例を蓄積し、解析を行う。
既存のハードディスクなどを使用したため、予定より物品費が少なくなった。次年度はデータの蓄積および解析にもより力を入れて行うため、ハードディスクやコン ピュータも必要に応じて購入を検討する予定である。また、学会参加および研究成果の発表、論文作成のための費用にも充てる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Neuro-Oncology Advances
巻: 6 ページ: 1-9
10.1093/noajnl/vdae016
Journal of Neuro-Oncology
巻: 165 ページ: 251~259
10.1007/s11060-023-04454-9