研究課題/領域番号 |
23K15640
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中田 聡 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (10817191)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 髄芽腫 |
研究実績の概要 |
髄芽腫の生存率はグループ毎に大きく異なり、再発時の予後は非常に厳しい。Schlafen family member 11(SLFN11)はDNA損傷治療への感受性を規定しており、髄芽腫の予後不良群で発現が低下しているが、再発例でどうかは検討されていない。またSLFN11低発現の腫瘍に対し、セリン/スレオニンキナーゼATR(ataxia telangiectasia and Rad3-related)及びCHK1の阻害薬が有効と報告されているが、脳腫瘍での知見は乏しい。 今回、SLFN11低発現髄芽腫細胞株でATR-CHK1阻害薬の効果を検討した。また再発髄芽腫のモデルとして、放射線耐性株、及びDNA損傷薬シスプラチンの耐性株を作成し、これら耐性株でのSLFN11発現を検討、またATR-CHK1阻害薬が耐性化を解除するか、検討した。 ATR阻害薬Ceralasertib、Elimusertib及びChk1阻害薬PrexasertibはSLFN11低発現髄芽腫D425及びONS76のシスプラチン及びカンプトテシン感受性を高めた。更にシスプラチンとの併用療法はD425小脳腫瘍の増殖を抑制し、マウスの生存期間を延長した。別の患者由来細胞株DAOYにX線3Gy 8回を間欠的に照射し、放射線耐性株を樹立(DAOY-RR)、またシスプラチンを段階的に培地に添加し、シスプラチン耐性株を樹立した(DAOY-CisR)。SLFN11発現はDAOY-RRで6割、DAOY-CisRで3割に減少しており、共に他のDNA損傷薬への交叉耐性も獲得していた。ATR-CHK1阻害薬はシスプラチン耐性を改善したが、カンプトテシン耐性を改善しなかった。SLFN11低発現細胞株及びDAOY-RR、DAOY-CisRへのATR-CHK1阻害薬と放射線の併用療法を現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SLFN11低発現の難治・再発髄芽腫に対するATR-CHK1阻害薬の有効性を示すことに主眼をおいて研究を進めているが、複数モデルの作成にやや難渋した。それぞれのモデルの特性、ATR-CHK1阻害薬の作用発現のメカニズムの検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
補助事業を活用し200種類の化合物でドラッグスクリーニング、SLFN11(-)で特異的にシスプラチン感受性を上げる薬を探索する。またin vivoの実験をシスプラチン単独群、ATR/Chk1i単独群を含め、再度行い、再現性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
難治性髄芽腫モデルの作成に難渋したため、その解析、特に動物モデルでの検討が遅れている。次年度においては、多くのin vivo実験を行う必要があり、マウスの治療薬の購入、バイオルミネッセンスによる腫瘍増殖の評価などに多くの予算を必要としている。
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