研究課題
出血性脳卒中の転帰改善のための合理的な治療戦略には、頭蓋内の血管外血液の無毒化と早期の頭蓋外排出が考えられるが、現状ではその方法は十分ではない。本研究では出血性脳卒中の中でも特に予後不良であるくも膜下出血に着目し、マウスくも膜下出血モデルにおいて強力な遊離型ヘモグロビンのスカベンジャーであるハプトグロビンを利用した新しい治療法を開発することを目的とする。くも膜下出血では遊離型ヘモグロビンが遅発性脳虚血の原因となり、転帰不良の原因となる一方、ハプトグロビンは脳脊髄液中には殆ど存在していない。そこで、ハプトグロビンを脳脊髄液中に注入することで、頭蓋内ヘモグロビンの代謝や排出の促進と遊離型ヘモグロビンの無毒化により、遅発性脳虚血の原因となる神経炎症を防ぐことを目的とする。マウスくも膜下出血モデルを作成後に、浸透圧ポンプを左側脳室前角に設置し、脳室内注入なし、vehicleの24時間持続注入、またはアルブミン溶液の24時間持続注入を行い、各群で24時間後のくも膜下出血量、神経所見、脳浮腫の程度(wet/dry法)に有意な差がないことを確認した。次いで、マウスをshamモデル-vehicle注入群、shamモデル-ハプトグロビン注入群、くも膜下出血モデル-vehicle注入群、くも膜下出血モデル-ハプトグロビン注入群の4群に分け、vehicleまたはハプトグロビン溶液を持続脳室内注入し、24時間後、48時間後にくも膜下出血量、神経所見、脳浮腫の程度、脳血管攣縮の程度を評価した。また屠殺時に経心臓灌流した後に、脳や頚部リンパ節を採取し、ウエスタン・ブロット法や免疫染色にて頭蓋内ヘモグロビンやハプトグロビン量、頚部リンパ節のヘモグロビンやハプトグロビン量、ミクログリアやマクロファージの活性化、その他の炎症反応を評価した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、くも膜下出血のマウスモデルにおいて、ハプトグロビンの脳脊髄液腔内投与により、頭蓋内ヘモグロビンの代謝や排出が促進され、頭蓋内ヘモグロビンの無毒化、早期消失に繋がり、脳血管攣縮や神経炎症が軽減することに関する研究成果が得られつつあるため。
今後も基本的に当初の計画通り、実施する予定で、次年度はハプトグロビン投与効果を分子生物学的に詳細に解析する予定である。
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