マウスに持続脳波ビデオモニタリング用電極を装着し、24時間後にくも膜下出血(SAH)急性期モデルとして確立している血管内穿通法によりsham及びSAHモデルを作成した。モデルは全身麻酔下、手術用顕微鏡を用いてマウスの左内頚動脈先端部をナイロン糸にて血管内より穿通させることにより作成した。モデル作成中は生理学的パラメータを尾より経皮的にモニターし、直腸温は電気マットを使用して約37℃に維持した。Sham群でも同様の手技を行ったが、内頚動脈に挿入したナイロン糸を穿通させずに回収した。まず、モデル作成30分後にランダムに溶媒又は3mg/kgの選択的AMPA受容体阻害薬ぺランパネル(PER)を腹腔内投与し、24時間後に盲検的に生理学的パラメータ、致死率、神経症状、SAHの程度、神経細胞アポトーシス、てんかん性放電やてんかんの重症度及び頻度を評価した。また、マトリセルラー蛋白ペリオスチンを含む関連蛋白の発現変化及び発現細胞をウエスタンブロット法及び免疫染色にて評価した。 Sham群に死亡例はなく、SAH+溶媒群、SAH+PER群のモデル作成後24時間以内の死亡率はそれぞれ27.3%、33.3%であった。生理学的パラメータに群間差はみられず、SAHの重症度は各々のSAH群で同様であった。SAH+溶媒群では24時間後の神経症状、痙攣を伴わないてんかん性放電の頻度、カスパーゼ3の活性化を伴う神経細胞は有意に多く、神経細胞におけるAMPA受容体サブユニットGluA1及びGluA2の活性化、ペリオスチンや炎症性サイトカイン(インターロイキン1β及び 6)の発現増強を伴った。これらの変化は3mg/kg PERにより部分的に抑制された。
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