研究課題/領域番号 |
23K15650
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山本 隆広 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 病院 医員 (30849089)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | エピトランスクリプトミクス / 膠芽腫 / トランスファーRNA修飾 / 遺伝子翻訳 / TRIT1 / CDKAL1 |
研究実績の概要 |
本研究では膠芽腫をはじめとする脳腫瘍を対象に研究を行っている。特にtRNA第37位修飾との関連に着目した。tRNA第37位を修飾する酵素にはTRIT1、CDKAL1、CDK5RAP1等が知られている。本研究課題ではとくにtRNA修飾酵素TRIT1に着目した。これまでの研究活動でshRNAを使用し、ヒト膠芽腫培養細胞を元にTRIT1ノックダウン細胞株を3種作成し、TRIT1をノックダウンした細胞では、細胞増殖能が低下することを発見していた。これに加えてノックアウト細胞を作成すべく、CRISPR/Cas9によるノックアウトシステムの作成を行った。今後はこれらの細胞株をヌードマウス脳内移植モデルにて腫瘍形成能の評価を行う予定である。TRIT1はセレノシステインtRNAを修飾することが知られていることから、セレノプロテインの遺伝子翻訳(タンパク合成)を調べたところ、セレノプロテインW(SEPW1)のタンパク減少を認めた。TCGAのデータベースにてグリオーマおよび膠芽腫患者の生存期間との関連を調べたところSEPW1発現が少ない患者のほうが生存期間が長いことが分かった。2年目ではさらにメカニズム解明を進めていく予定である。また同37位を修飾するtRNA修飾酵素の一つであるCDKAL1に関しても解明を進め成果を報告した(Huang R et al., Adv Sci 2023)。tRNA第37位修飾に関して着実に解明を進めつつあり、本研究課題2年目となる次年度はin vitro, in vivoの実験を遂行しつつ、並行してその治療への応用を模索していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画していたことは遂行できている。今後はin vivoの実験が主体となるが、近年の価格高騰のため当初予定していた数のマウス購入は困難であると考える。使用するヒト膠芽腫培養細胞の種類を減らし、1グループごとのnを減らすことで対処し、遅延なく本研究課題を進めることが出来るよう取り組む所存である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画にそってin vivoの実験を行いつつ、in vitroの実験では細胞増殖低下のメカニズムを明らかとすることを目指す。並行して治療への応用を探索するためtRNA修飾酵素(TRIT1)の阻害剤候補をスクリーニングすることで本研究課題遂行の推進をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
近年の実験用物品の価格高騰により次年度のin vivo実験にて当初予定していた以上の使用額が見込まれることから次年度使用額が生じる配分とした。次年度使用を行うことで、本研究課題を計画通り遅延なく遂行する予定である。
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