研究課題/領域番号 |
23K15655
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
善積 哲也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 研究員 (00837429)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ラットモデル / 圧迫性脊髄症 / SOCSタンパク質 / 脂肪組織由来幹細胞 / 脊髄前角細胞 / 膜透過性神経分化誘導ペプチド / ローターロッド / 緩徐進行性 |
研究実績の概要 |
12週齢、雄のWistar rat(250-290g)に対し、吸水膨張性ポリマーをC5-C6の椎弓下に挿入・留置し、脊髄の慢性圧迫を導入することで圧迫性脊髄症モデルを作成した。脊髄圧迫導入後5週目よりロータロッド持続歩行時間の、8週目より前肢握力の有意な低下が生じ、実際の臨床場で見られるような圧迫性脊髄症と同様に、緩徐進行性の経過を辿った。また脊髄圧迫導入後26週間後においてコントロール群と比較して脊髄圧迫導入群では有意な脊髄前角細胞数の減少が認められた。また、圧迫性脊髄症モデル作成時に、ラットの鼠径部より皮下脂肪組織を摘出し、脂肪由来間葉系幹細胞分離キット(フナコシ)を用いて、ポリエチレン-ポリプロピレン(PE-PP)芯鞘構造の不織布でできた三次元構造基材に、脂肪組織をトラップしてMSC NutriStem XF培地で培養して,脂肪組織由来幹細胞(ASCs)を分離し、培地交換せずに1週間培養、その後1週間から10日で、基材の線維上に組織から線維芽細胞様のASCsが増殖しているのを確認し、1~2週間後、ASCsが基材の10~20%を占めるようになったら、継代培養した。その後SOCS7由来BCボックスぺプチドをASCsの培地中に2μMの濃度で添加し、24時間後以降に、細胞について神経分化を形態学的、免疫細胞化学的(抗NeuN抗体、抗ChAt抗体)に検討し、分化した細胞がコリン作動性ニューロンであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧迫性脊髄症モデルの作成、さらにラットの鼠径部より皮下脂肪組織を摘出し、脂肪由来間葉系幹細胞を分離・培養し、これにSOCS7由来の膜分化誘導ペプチドを導入することで、脂肪由来幹細胞をコリン作動性ニューロンに分化させることに成功した。上記を安定的に行うことが可能で、今後これらを用いて治療実験を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
作成した圧迫性脊髄症ラットモデルを以下の3グループに振り分ける。このモデルは、脊髄圧迫導入後8週間目ではすでに脊髄症が発症し、運動機能が進行性に低下しているため、この時点で治療介入を開始する。Group A:圧迫性脊髄症ラット作成後8週目から週1回生理食塩水を尾静脈から投与(n=12)、Group B:圧迫性脊髄症ラット作成後8週目から週1回生理食塩水に懸濁したASCs(2.5×106cells)を尾静脈から投与(n=12) Group C:圧迫性脊髄症モデルラット作成後8週目に生理食塩水に懸濁したSOCS7由来膜透過性神経分化誘導ペプチドによりASCsを分化誘導させたコリン作動性ニューロン(2.5×106cells)を尾静脈から投与(n=12)。また、上記と同様のプロトコールで髄腔内移植による治療効果も検討する予定である。免疫組織学的評価:圧迫性脊髄症モデルラット作成後20週間後に還流固定を行い、免疫組織学的な評価へと移行する。C5-6の脊髄圧迫部位を採取して、抗ChAt抗体を用いた前角運動ニューロンの評価を行う。また血管新生などへの影響も調べるために抗VEGF抗体による評価も行う。静脈投与後の細胞動態:[3H]-thymidineを培地に添加し、移植前24時間取り込ませ、ラジオアイソトープ標識したASCsまたはASCsを分化誘導させたコリン作動性ニューロンを圧迫性脊髄症モデルラットに移植し、血液および各臓器の放射活性から各組織に到達した移植細胞の割合を算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラット・マウス兼用型ロータロッドやスマート型ラット・マウス測定装置が他施設のものを一時的に使用することができた。今年度購入する予定である。また圧迫性脊髄症モデルラットの作成、脂肪組織由来幹細胞の分離・培養、また脂肪組織由来幹細胞からSOC7由来膜透過性分化誘導ペプチドを用いたコリン作動性ニューロンへの分化誘導を安定的に行うことを試行してきたため、圧迫性脊髄症モデルの治療実験までは行っておらず、学会参加・学会発表を行わなかった。今年度は分離した脂肪組織由来組織幹細胞やこれらを分化誘導させたコリン作動性細胞を圧迫性脊髄症モデルラットに投与する治療実験を進めていき、圧迫性脊髄症に対する治療効果を検討していく。
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