研究課題/領域番号 |
23K15667
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐野 徳隆 京都大学, 医学研究科, 助教 (50957793)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 下垂体幹細胞 / 下垂体機能低下症 / 下垂体腺腫 |
研究実績の概要 |
初年度に行う予定であった摘出標本の免疫染色、および下垂体幹細胞の分離に関してSOX2・SOX9・S100βでの染色を行っており、摘出標本における局在や共局在のパターンなどを行ってきた。また新たに前葉組織がある程度の塊で得られた症例が複数あり、そちらに関してはmarginal cell layerが一部含まれていることまでは確認できた。 当初2年間で20例の正常下垂体組織を含む下垂体腫瘍摘出標本を目標に考えていたが、現在の所研究年度が始まる前の検体も含め30例程度が得られており、免疫染色などを行う標本についてはある程度目途がついてきている。一部の摘出サンプルにおいてもSOX2/SOX9陽性細胞が含まれていることが確認できている。ただ下垂体幹細胞の分離を行うには生細胞の状態で表面抗原による染色を行う必要がある。摘出した未固定の状態で正常細胞と腫瘍細胞を分離する必要があるため、ある程度の大きさの正常下垂体組織が必要であり、年10例の標本に対して3例程度(下垂体生検が必要な症例や下垂体後方の病変を摘出する際に下垂体半切などを追加する必要がある症例)となっている。標本の摘出についての手技は十分習熟してきている。また正常下垂体については病変の摘出のためやむを得ず切除するべき部分にとどめる必要があり、現在まで標本を得た症例について尿崩症やホルモン分泌不全がより増悪した症例の増加はなく、今のところ来年以降の標本の収集についても予定通り継続できると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
移植を行うための下垂体機能低下マウスモデルの作成を1年度目に行う予定であった。Frontiers in Endocrinology, 2023の方法を安定的に作成できるように準備を行う予定であったが、検体の収集を中心に進めることを優先したため2年度目に予定を変更して実験を行うこととした。また分化誘導については1-2年目の予定としていたが、生細胞の状態での分離・培養ができていないため、次年度以降に行う方針としている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度:当初初年度に行う予定であった摘出標本の免疫染色、および下垂体幹細胞の分離に関してSOX2・SOX9・S100βでの染色を行っており、摘出標本における局在や共局在のパターンなどを行ってきた。ある程度まとまった大きさの下垂体正常組織標本が取れる症例は年に3例程度と考えられ、おそらく次年度以降も同様の症例数になると考えられるため、固定検体の染色を行う症例と生細胞を得られることがあらかじめ予定される症例を分けて準備を行う。すでに前葉組織がある程度の塊で得られた症例が複数あり、そちらに関してはmarginal cell layerが一部含まれていることまでは確認できているが、幹細胞の分布について追加で詳細な検討を行う。また移植を行うための下垂体機能低下マウスモデルの作成を行う。下垂体組織幹細胞の分離と分化誘導については染色条件を確定させた後に、摘出検体から得た細胞をFACSにより選別する。選別後、未分化状態を維持した培養の方法を確立する。また、ホルモン分泌を行う成熟細胞への分化誘導法の検討を行う。まずは、マウスとヒトで幹細胞からの分化プロトコールが十分に研究されているGH/ACTH産生細胞への分化誘導を行う。 令和7年度:分離・培養した下垂体組織幹細胞のマウスへの移植。移植には2つの方法を用いる。①摘出検体から分離した細胞を培養することなく、分化が自然に起こる若齢マウスの間脳へ移植を行う。②分離後に培養、分化させた細胞をマウスの間脳へ移植する。分化細胞については、皮下の移植も行う。いずれのモデルにおいても、生着率とホルモン分泌機能の評価を行う。また移植した先の生着や血管新生などについても組織学的な評価を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動物実験について次年度以降に予定を変更したことによるもの。また現在まで行った免疫染色などについてはもともと研究室にあるものを使うことができた。また当初購入予定であったPCやソフトなどについて今回の研究費以前の経費で得られたため、次年度以降の抗体や試薬の購入、動物実験の費用に使用することとした。
|