研究課題/領域番号 |
23K15672
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
秋本 大輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90846718)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 髄膜腫 / 腫瘍塞栓 / 塞栓物質 |
研究実績の概要 |
髄膜腫は頭蓋内原発脳腫瘍において最も頻度の高い腫瘍であり、その大部分が病理組織学的には良性(WHO分類gradeⅠ)と診断され、外科的治療により良好な予後が期待できる。一方で、組織学的に良性の髄膜腫にも強い組織浸潤、早期再発、悪性転化をきたす症例を経験することは少なくない。悪性髄膜腫に対して、未だ有効とされる化学療法の薬剤は確立されていない。再発を繰り返す髄膜腫は、外科的切除や放射線治療に抵抗性を示すようになり、腫瘍自体の症状や、繰り返し行う治療による影響でQOLの低下が問題となる。さらに再発髄膜腫の手術成績と合併症に関しての報告では、手術を重ねることによって腫瘍のグレード上昇を22%に認め、48%の症例で再手術関連の合併症を認めたとしている(Magill ST et.al. J Neurosurg 2019)。これらのことから、初回治療時の腫瘍制御の上昇と再発治療時のより低侵襲な治療法が求められている。近年では血流が豊富で大きな髄膜腫に対して、術中の出血量を減らし、より安全な腫瘍摘出を可能とすることを目的に、術前に腫瘍栄養血管塞栓術が行われている。しかしその手術に関する効果は限定的とされ、有効性は疑問視されていた。我々は、先行研究において腫瘍塞栓がWHOgradeⅠの髄膜腫だけでなく、WHOgradeⅡ、Ⅲの悪性髄膜腫に対しても再発期間の延長効果があることを世界で初めて報告したが(Akimoto.T. et al. J Neurointerv Surg 2022)、その機序は不明であり、過去の報告では栄養血管の塞栓で、低酸素環境による悪性化が危惧されていた。再発難治性髄膜腫患者由来細胞を用いて、塞栓後の細胞への影響と再発の機序を解明し、塞栓物質に抗癌剤や分子標的薬を組み合わせた髄膜腫の血管内治療による新たな治療法の開発を目的としている。低酸素環境での1%以下での明かな増殖抑制効果と5%以下からの細胞周期への影響を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
条件設定に難渋指定しまい。環境設定に時間がかかってしまった。 5%以下の低酸素環境で明らかな細胞増殖効果とそれに合わせたシグナル変化に関して実験を進めているが抗体の購入や試薬を揃えるのに時間がかかった。倫理申請にも時間がかかっており、患者検体でのマイクロアレイに関しては来年度の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
酸素濃度が1%の条件で明らかな増殖抑制効果と細胞周期の停止があることがわかったのでその条件での既報のAKT阻害薬、Hedghog阻害薬、FAK阻害薬、VEGF阻害薬、PI3k阻害薬、mTOR阻害薬、Gemcitabineの低酸素下での効果の確認を行っていくと同時に、低酸素下でのシグナル変化を引き続き確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ用の予算を考えていたが、対象患者がちょうどおらず、来年度に持ち越して使用できればと考えている。また、教室の在庫の試薬が使用できていたので、それらの補充でWBの抗体や阻害薬などの購入費用に当てていくと同時に患者由来細胞のモデルの作成と維持費用とする予定としている。
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